「それ、ネットで買ったほうが安いよね」
——工場の購買担当に、こう言われた経験は、FA技術商社の営業なら一度はあるはずだ。
カタログを広げて見積もりを出した瞬間、目の前のスマホでモノタロウの価格を調べられ、商談が終わる。
FA技術商社営業の現実は、世間が想像するよりはるかに厳しい挟み撃ちのなかにある。間接資材の市場規模は8〜10兆円と言われ、そこにネット通販大手が2桁成長で食い込んできている。一方、上流ではメーカーが直販を強化し、商社を飛ばす動きも進む。右から左に物を流すだけの商社は、上からも下からも存在意義を問われている。
そして同時に、扱う市場そのものは拡大している。
- FA日本市場は2024年で約3.3兆円、2033年には約17兆円に達する予測——複数の市場調査機関による推計だ
- 製造業向けロボットの世界市場は2028年に2兆円突破の見込み
- 協働ロボットの出荷台数は前年比約148%、中小製造業でも自動化が進む
- GX・脱炭素・省エネ: 受変電設備、空調、照明、水処理など産業インフラ全体の更新需要
- SiC・パワー半導体など新領域: 産業機器の高効率化に伴う新しい商材
- 労働力不足: 製造現場の省人化ニーズが全業種で高まる
つまり、市場は伸びているのに、従来型の商社営業の立場は危うくなっている。この矛盾こそが、FA技術商社営業の本質的な課題だ。
ここで、製造業の構造を直視する必要がある。日本には製造業が約40万社あるとされるが、機械工具商社・販売店・問屋は約1万社。
商社の営業は、売上の元が取れる大手・中堅工場には足繁く通うが、従業員数名の小規模工場には行かない。この行かない領域をネット通販が取った。そして、商社が通う大手工場ですら、定番品はネットで調達され、メーカーは直販を狙う。
そんな中、FA技術商社の営業の現場は意外なほど変わっていない。担当顧客のルート訪問、メーカーカタログの提示、見積もり対応、納期調整、メーカー営業との同行——10年前と本質的には同じ業務だ。
ところが、顧客である製造業も、競争環境も急速に変わっている。定番品はネットへ、メーカーは直販へ、それでも工場は人手不足と多品種化に苦しむ。従来の御用聞き型・カタログ営業のままでは、中抜きとネット調達に挟まれて消えるしかない構造になってきている。
結論から言う。
FA技術商社営業こそ、生成AIで景色が変わる仕事である。
理由は3つある。
①数百社の取扱メーカー製品から、工場の課題に最適な組み合わせを設計する作業はAIが圧倒的に得意
②受変電・空調・FA・ロボット・半導体など複数領域を横断する提案を、AIなら短時間で束ねられる
③GX・省エネ・補助金という経営の言語への翻訳がAIで可能になる
——この3条件が揃う仕事は、AIとの相性が極めて良い。
本記事では、複数メーカー製品をワンストップで扱う技術商社の営業の現場で明日から使える生成AI活用術を、5つの戦術として提示する。読み終えたとき、カタログを広げて単品を売る訪問から、工場全体の課題を複数メーカーの組み合わせで解く技術翻訳者へ切り替える地図が手に入っているはずだ。
FA技術商社営業の現実:中抜きとネット調達に挟まれて、何で勝つか
技術商社の存在意義が問われている
まず前提を整理する。FA技術商社営業の最大の難しさは、自社が物を作っていないことだ。同じ製品はメーカーからも、ネット通販からも買える。だからこそ、商社が介在する理由を、提案価値で示し続けなければならない。
商社が介在する価値が問われる3つの局面を整理する。
| 局面 | 商社が消える場合 | 商社が選ばれる場合 |
|---|---|---|
| 定番品の調達 | ネット通販のほうが安く速い | 緊急対応、まとめ調達、与信・支払条件で価値を出す |
| メーカー製品の購入 | メーカー直販で十分 | 複数メーカー横断の中立提案、組み合わせ設計で価値を出す |
| 単純な見積もり対応 | 価格比較で負ける | 工程全体の課題解決、技術サポートで価値を出す |
つまり、単品・定番・価格の勝負に持ち込まれた時点で、商社は負ける。逆に、複数メーカーを横断した課題解決に持ち込めれば、商社にしか出せない価値が生まれる。これがメーカー営業(自社1ブランドを売る)との決定的な違いだ。
技術商社だけが持つ3つの武器
FA技術商社には、メーカーにもネット通販にもない武器がある。
- 中立性: 特定メーカーに縛られず、顧客にとって最適な製品を横断的に選べる
- ワンストップ性: 受変電・空調・照明・水処理・FA・ロボット・半導体まで、工場まるごとを1社で対応できる
- 現場密着性: 顧客の工場に足を運び、現場の困りごとを直接吸い上げられる
メーカーは自社製品しか売れない。ネット通販は物を届けるだけで現場には来ない。複数メーカーを横断し、工場まるごとの課題を現場で聞き取り、最適な組み合わせを設計できるのは、技術商社だけだ。この強みを言語化し、提案に変えられるかどうかが、生き残りの分かれ目になる。
FA技術商社営業の独自構造
FA技術商社営業には、他業界と比較しても特殊な構造がある。
- 取扱メーカーが膨大: 数百〜800社超の製品を扱い、その中から最適な組み合わせを選ぶ
- メーカー営業との同行: 専門性の高い製品は、メーカー営業と同行して提案
- 複数領域の横断: 電気・機械・空調・水処理・ITなど、技術領域をまたぐ
- 既存深耕型: 工場との長期取引、設備更新・増設で継続受注
- 与信・在庫・物流機能: 単なる仲介ではなく、まとめ調達・短納期・支払条件などの商社機能
- 新領域への参入機会: GX、脱炭素、SiC、AMR(自律搬送ロボット)など、新しい商材で価値を再定義できる
そして、複数メーカー横断の組み合わせ提案と工場全体の課題構造化は、生成AIで武装すれば中堅商社の営業でも実装できる。これが本記事の出発点だ。
戦術1:担当エリアの工場群をAIで構造化し、横断ニーズを発掘する
よくある失敗:今売れている製品の取引だけ見る
技術商社営業がやりがちな失敗は、今取引のある製品カテゴリだけで顧客を見ることだ。だが今の取引の外側にこそ、商社ならではの横断提案の余地がある。
- 顧客の工場が抱える設備全体の構成(受変電・空調・照明・生産設備・水処理)
- 今は他社・他ルートで調達している領域
- 老朽化して更新が近い設備
- 人手不足が深刻な工程
- GX・省エネ・脱炭素への対応状況
- 複数領域をまたいで解決できる課題
これらを担当工場30社分、人力で常時把握するのは現実的でない。
AI活用:工場まるごとの設備構造マップを作る
あなたはFA技術商社の営業コンサルタントです。
担当エリアの工場30社について、工場まるごとの設備構造を分析してください。
【入力情報】
- 顧客台帳(社名、業種、現在の取引製品、過去3年の発注推移)
- 公開情報(企業HP、IR、工場紹介、求人、プレスリリース)
【分析してほしい軸】
- 業種・生産品目・生産方式
- 工場の設備構成(受変電・空調・照明・生産設備・水処理・搬送など)
- 現在の取引領域と、未取引の領域
- 老朽化・更新が近いと推定される設備
- 人手不足が深刻と推定される工程
- GX・省エネ・脱炭素への取り組み状況
- 複数領域を横断して解決できそうな課題
【各社について出してほしい内容】
- 今の取引の外側にある横断提案の余地TOP3
- どのメーカーの製品をどう組み合わせれば解決できるか
- メーカー単独では出せない、商社ならではの提案ポイント
- 推奨アプローチ
- NGトーク(ネット調達・直販と価格勝負になる提案)
【出力フォーマット】
- 30社の設備構造マップ
- 横断提案の機会マトリクス
- 各社の典型的な提案シナリオ
- 設備更新タイミングを意識した訪問計画
これだけで、今の取引の延長だけを回る営業から、工場まるごとの課題を発掘する営業へ変わる。単品の価格勝負から抜け出す第一歩だ。
一歩進んだ使い方:複数メーカー横断の最適組み合わせを設計する
以下の工場の課題に対して、取扱メーカーの製品を横断的に組み合わせた解決策を設計してください。
【工場の課題】
- 業種:●●
- 課題:(例:検査工程の人手不足、受変電設備の老朽化、空調の電力コスト増など)
- 既存設備:●●
- 予算感・投資判断の傾向:●●
【自社の取扱メーカー・領域】
- FA・制御:●●
- 受変電・電力:●●
- 空調・環境:●●
- ロボット・搬送:●●
- その他:●●
【出力】
1. この課題を解決する複数メーカー横断のソリューション案3パターン
2. 各パターンの構成製品と概算
3. メーカー単独提案では実現できない、組み合わせの価値
4. 段階的な導入ロードマップ
5. 競合(メーカー直販・他商社・ネット調達)に対する差別化ポイント
ここまでやれば、製品を売る営業から、工場全体を設計する技術翻訳者へ変わる。これが技術商社営業の最大の差別化軸だ。
戦術2:単品売りからシステム売りへ、提案書を量産する
カタログ提示ではなく、課題解決ストーリーを売る
FA技術商社営業の核心は、単品のカタログ提示から、複数メーカーを束ねた課題解決ストーリーへの転換だ。
例えば、ある食品工場の「検査工程の人手不足」という課題に対して。
| アプローチ | 単品売り(負ける) | システム売り(勝てる) |
|---|---|---|
| 提案内容 | 画像センサ単体の見積もり | 画像検査+搬送ロボット+既存ラインとの接続+保守体制の一括提案 |
| 競合 | ネット調達、メーカー直販と価格比較 | 組み合わせ設計力で比較されない |
| 価値 | 物の価格 | 工程全体の省人化と、それを支える複数メーカー横断の設計 |
| 持参資料 | カタログ、見積書 | 工程改善提案書、ROI試算、導入ロードマップ |
これを手作業で作るのは負担が大きいが、AIなら短時間でドラフトを作れる。
AI活用:複数メーカー横断のソリューション提案書を生成
以下の工場の課題について、複数メーカー製品を組み合わせたソリューション提案書を作成してください。
【工場情報】
- 業種:●●
- 課題:●●
- 既存設備:●●
- 投資判断者:(経営/設備保全/生産技術/購買)
【提案に使える取扱メーカー・製品】
- ●●(FA・制御)
- ●●(ロボット・搬送)
- ●●(電力・受変電)
- ●●(空調・環境)
【出力フォーマット】
1. 課題の構造化(なぜこの課題が起きているか)
2. 複数メーカーを組み合わせた解決策(構成図のイメージ)
3. 各構成製品の役割と、組み合わせの相乗効果
4. 投資回収シミュレーション(省人化・省エネ効果の試算)
5. 段階的導入ロードマップ
6. 商社として提供する付加価値(設計・施工・保守・与信・短納期)
7. ネット調達・メーカー直販では実現できない理由
8. 想定される質問と回答準備
ここまで具体化された提案書を持参すれば、単品を売る営業ではなく、工場の課題を解決するパートナーとして認識される。価格比較の土俵から完全に降りられる。
重要:商社機能そのものを価値として言語化する
技術商社には、製品以外の価値がある。与信、在庫、短納期、まとめ調達、施工、保守。これらはネット調達やメーカー直販では代替しにくい価値だ。これを提案に明示的に組み込む。
以下の取引について、当社が商社として提供している付加価値を言語化してください。
【取引情報】
- 顧客:●●
- 取引内容:●●
- 顧客の調達体制:●●
【出力】
1. 当社が提供している商社機能(与信、在庫、短納期、まとめ調達、施工、保守、技術サポート等)
2. それぞれが顧客にもたらす金額換算の価値
3. ネット調達・メーカー直販に切り替えた場合に顧客が失うもの
4. この価値を顧客に伝えるトークスクリプト
5. 価格だけで比較されそうになった時の切り返し
商社機能を金額価値として語れる営業は、「高い」という指摘を「その価格には理由がある」に変えられる。
戦術3:GX・省エネ・脱炭素・補助金を武器に変える
製造業の経営者はGXとコスト高に追われている
業界の重要インサイトを共有する。2024〜2026年は、製造業にとってGX・省エネ・コスト高対応が経営課題の上位にある。
- 電力コストの高騰: 受変電設備・空調・照明の高効率化ニーズ
- 脱炭素・GX: カーボンニュートラル対応、再エネ導入、省エネ設備への更新
- 省力化投資補助金・ものづくり補助金: 自動化・省エネ投資への公的支援
- SiC・パワー半導体: 産業機器の高効率化を支える新技術
- 水処理・環境規制: 排水処理、PFAS対応など環境関連の更新需要
- 労働力不足: 全領域での省人化ニーズ
これらは、まさに技術商社が複数領域を横断して提案できる領域だ。メーカー1社では受変電も空調も水処理もカバーできないが、商社なら束ねられる。
ここに、技術商社営業が圧倒的に価値を発揮できる余地がある。単品カタログではなく、GX・省エネ・補助金を軸にした工場全体の更新提案を持っていく営業は、確実に扉が開く。
AI活用:工場経営者向け月次情報レターを自動生成
あなたは製造業の設備・GXコンサルタントです。
工場の設備保全責任者・経営者向けに、月1回配布するお役立ち情報レターを作成してください。
【今月のテーマ候補】
1. 電力コスト削減:受変電設備・空調の高効率化事例
2. 中小企業省力化投資補助金・ものづくり補助金の最新動向
3. GX・脱炭素対応:再エネ・省エネ設備更新のロードマップ
4. SiC・パワー半導体による産業機器の高効率化
5. 水処理・環境規制(PFAS等)への対応事例
6. 工場まるごとの省人化:複数工程の自動化優先順位
7. 設備の老朽化更新を補助金で進める方法
【条件】
- A4 2枚(2,000字程度)
- 設備保全責任者・経営者がそのまま意思決定の参考にできる粒度
- 自社製品の売り込み色を抑え、情報価値を最優先
- 末尾に、設備更新・GX・補助金活用のご相談はお気軽に、と当社連絡先
- 出典URL(経済産業省、資源エネルギー庁、中小企業庁)を明記
- 申請期限や問い合わせ先などの実務情報を必ず含める
【自社の強み】
- 取扱領域:●●
- 過去の設備更新・GX支援実績:●●件
- ワンストップ対応の実績:●●
このレターを毎月、担当工場の設備責任者・経営者50〜100名に郵送する。半年続ければ、●●商会さんは工場全体の課題を相談できる相手という認識が確立される。これは単品の値引きでは絶対に作れない関係性だ。
さらに踏み込む:業種別カスタマイズ
製造業は業種によって設備構成も規制も全く違う。
以下の業種条件に合わせて、月次レターをカスタマイズしてください。
【入力データ】
- 業種:(例:食品、化学、金属加工、電子部品、自動車部品など)
- 工場規模:●●
- 主な設備課題:(電力コスト / 老朽化 / 環境規制 / 人手不足など)
【出力】
1. その業種に最適な情報トピック
2. 関連する業種特有の規制・環境基準
3. 同業種の設備更新・GX事例(公開情報のみ)
4. 自社の横断提案の切り口
業種別に個別化されたレターは、一律の商社チラシではなく、自分たちの業種を理解したパートナーからの情報として認識される。
戦術4:訪問記録と工場別カルテをAIで蓄積する
工場との関係は設備の寿命を超える数十年取引
FA技術商社営業の特殊性は、一度信頼を得ると、工場のあらゆる設備の相談窓口になり、数十年にわたる取引になることだ。受変電の更新、ラインの増設、空調の入れ替え、新工場の立ち上げ——工場が動き続ける限り、相談が来る。逆に、一度「あの商社は高いだけ」と思われると、ネット調達と直販に流れていく。
ここで重要なのが、工場1軒ごとの個別情報をどう蓄積していくかだ。
- 設備保全担当・購買担当の関心、人柄
- 工場の設備構成、各設備の更新時期
- 過去の取引履歴、メーカー横断の提案実績
- 競合商社・メーカー直販・ネット調達の利用状況
- 設備投資計画、GX・省エネへの意向
- 複数領域にまたがる潜在ニーズ
これらを記憶と手帳で管理してきたベテランが多いが、退職時に消滅する。組織知化が業界全体の課題だ。
AI活用①:訪問音声メモから工場別カルテを自動生成
以下は工場訪問直後の音声メモです。
これを工場別カルテと次回訪問準備シートに整理してください。
【出力フォーマット1:工場別カルテ】
- 訪問日時 / 工場名 / 対応者(設備保全/購買/生産技術/経営)
- 工場の設備状況・直近の課題
- 現在の取引領域と、未取引で狙える領域
- 設備の老朽化・更新タイミング
- 競合動向(他商社・メーカー直販・ネット調達の利用)
- GX・省エネ・補助金への関心
- 横断提案の機会(複数領域にまたがる潜在ニーズ)
- 関係性ステージ(単品取引 / 複数領域取引 / 工場全体のパートナー)
【出力フォーマット2:次回訪問準備シート】
- 訪問のベストタイミング(設備更新期、予算編成期等)
- 持参すべき情報・複数メーカーの組み合わせ提案・事例
- 想定される会話の流れ
- 関連するGX・補助金・市場動向情報
【音声メモ】
「●●工場の田中課長と話してきた。受変電設備が30年経って更新を検討中。空調も古くて電力コストが高いと嘆いていた。今は当社からはセンサ類しか買ってもらえてないけど、受変電と空調をまとめて提案できそう。GX補助金が使えるなら一気に進めたい意向。ただ、定番の消耗品はモノタロウに切り替えられてしまった。競合の●●商社も出入りしている。来月、受変電と空調の組み合わせ提案を持っていくことになった。」
5分かかっていた記録作業が、音声30秒・AI処理10秒・人間レビュー2分で完了する。
日々数社訪問する営業なら、月15〜20時間の業務時間が浮く。
AI活用②:エリア全体の動向を月次で集約
以下は今月の工場訪問記録30件のサマリーです。
これを分析し、来月の営業戦略を作成してください。
【分析してほしいこと】
1. 担当工場で今月最も多く出ている設備課題TOP3
2. 設備更新・GX投資を検討している工場リスト(要フォロー)
3. 横断提案(複数領域)の機会がある工場リスト
4. ネット調達・直販に流れそうな取引リスト(防衛が必要)
5. 補助金活用に関心がある工場リスト
6. 来月の重点訪問先(戦略的優先度付き)
【出力】
- 担当エリア動向レポート(A4 1枚)
- 上司・本社報告用の数値サマリー
- 来月の訪問計画ドラフト
- 仕入先メーカーへのフィードバック・新規取扱検討の提案
これができる営業は、個別取引の管理だけでなく、担当エリア全体を俯瞰できる戦略家として組織内で評価される。
戦術5:メーカー直販・ネット調達時代の商社営業の生存戦略をAIで設計する
業界の構造変化は、営業担当者にも生存戦略を要求する
ここまでの4戦術は現場業務をどう変えるかだった。だがFA技術商社営業は、業界全体の構造変化、すなわちネット調達の拡大、メーカー直販の強化、中抜きの脅威、市場の成長の中で、営業担当者自身のキャリア戦略も問われる時代になっている。
具体的な業界変化:
- ネット調達の急成長: 間接資材市場8〜10兆円でネット通販が2桁成長、定番品は商社を通さない
- メーカー直販の強化: メーカーが商社を飛ばして直接顧客に売る動き
- 商社の二極化: 単品流通商社は淘汰、ソリューション商社は成長
- 新領域への拡張: GX、SiC、AMR、水処理など新商材で価値を再定義する商社の台頭
- DX・EC化: 商社自身のデジタル化、見積もり・受発注の自動化
- 専門性の高度化: 単なる仲介から、技術提案・エンジニアリングへ
つまり、従来の御用聞き型・カタログ流通型営業だけでは生き残れない。生き残る営業の条件は、複数領域を横断して工場全体を設計でき、新領域にも踏み込める「産業インフラのソリューション提案者」になることだ。
AI活用:自分自身のキャリア戦略をAIに分析させる
あなたはFA・産業設備商社向け営業のキャリアコンサルタントです。
以下の私の経歴をもとに、今後5年のキャリア戦略を提案してください。
【経歴】
- 現職:●●(FA技術商社/産業設備商社/電子部品商社など)、入社●年目
- 担当領域:●●
- 担当顧客:製造業●社
- 強み:●●
- 弱み:●●
【業界状況】
- ネット調達(モノタロウ・ミスミ等)の拡大、定番品が商社を通らない
- メーカー直販の強化、中抜きの脅威
- 商社の二極化(単品流通は淘汰、ソリューション商社は成長)
- GX・SiC・AMR・水処理など新領域への拡張
- 商社自身のDX・EC化
【出力】
1. 現職で生き残るための専門性強化プラン
2. 取得すべき資格・知識(電気・施工管理、エネルギー管理士、中小企業診断士、GX関連など)
3. 業界内転換の選択肢(ソリューション営業、エンジニアリング、新規事業、メーカー転身など)
4. 業界外への転用可能性(製造業の調達・設備、GXコンサル、産業系スタートアップなど)
5. 5年後の市場価値を最大化するアクションプラン(年次別)
これは戦術1〜4とは性質の違う、自分自身の生存戦略のためのAI活用だ。商社業界の構造変化は、営業担当者個人のキャリアにも確実に影響する。
ROIで考える:FA技術商社営業がAIを使う価値
AIツールに月数千円払う価値はあるのかという疑問が当然出てくる。試算してみる。
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 訪問前の工場リサーチ | 1社30分 | 1社5分 | 月50社で20時間節約 |
| 横断ソリューション提案書 | 1案件4時間 | 1案件40分 | 月10案件で30時間節約 |
| 月次GX・補助金レター | 作成不可(時間がない) | 月1回・100社配布 | 半年後の設備更新商談+5件 |
| 訪問・工場カルテ | 1日60分 | 1日15分 | 月15時間節約 |
| 商談温度感 | 単品でネットと価格勝負 | 工場全体の課題解決提案 | 受注単価・粗利率向上 |
| 大型案件の獲得 | 単品の積み上げ | 工場まるごとの更新提案で受注 | 1案件あたり受注額が桁違いに |
仮にChatGPT有料版(月額3,000円程度)を導入し、単品取引1件が工場まるごとの更新提案に化けただけで、受変電・空調・FAをまとめた提案は1案件数百万〜数千万円規模になる。ROIは数百〜数千倍だ。
そして何より、FA技術商社営業は一度工場全体のパートナーになれば、設備が動き続ける限り相談が来る業界である。単品取引を守るより、工場全体の相談相手になるほうが、長期の取引額は桁違いに大きくなる。AIで提案の質を高めることは、長期にわたって複利で効く投資だ。
立場別の第一歩
立場別に、取り組むべき優先戦術を整理する。
| 立場 | 最優先で取り組むべき戦術 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 新人営業・〜3年目 | 戦術1(工場設備マップ)+戦術4(訪問記録自動化) | 膨大な取扱製品を課題起点で整理できる |
| 中堅営業・4〜10年目 | 戦術2(横断ソリューション提案)+戦術3(GXレター) | 単品流通から課題解決提案への転換 |
| ベテラン営業・11年〜 | 戦術4の組織知化+戦術5(キャリア戦略) | 暗黙知を組織資産に転換、後継者育成 |
| 営業所長・支店長 | 全戦術のフレームワーク化 | ソリューション商社への組織転換 |
| 仕入・商品担当 | 戦術4のフィードバック活用+新領域(GX・SiC等)の開拓 | 現場の声を取扱メーカー戦略に直結 |
FA技術商社営業に必要な、これからの思考
最後に、FA技術商社営業が持つべき視点を整理する。
物を右から左に流すことを否定しない。だが流すだけの商社は、ネット調達とメーカー直販に挟まれて、確実に消える。市場は3.3兆円から17兆円へ伸びているのに、単品流通の立場は危うくなっている。顧客が本当に求めているのは、もう1社の見積もり業者ではない。複数メーカーを横断し、工場まるごとの課題を解決してくれるパートナーだ。AIを使える営業は、同じ訪問数でも、工場の設備担当者の中に残る印象が圧倒的に違う。1年後、その差は受注単価と取引領域の広がりとなって明確に表れる。3年後、その差はキャリアそのものを変える。
技術商社は、存在意義を問われ続ける業態だ。だが問われているからこそ、答えを持つ商社だけが選ばれる。物の価格では負ける。だが、複数メーカーを束ね、工場全体を設計し、現場に寄り添う力では、メーカーにもネット通販にも負けない。中立性・ワンストップ性・現場密着性——この3つを提案価値に変えられる営業が、次の時代も選ばれ続ける。
最初に工場まるごとのパートナーのポジションを取った営業が、その工場が稼働し続ける限り、あらゆる設備の相談を独占するポテンシャルがある。
まとめ:Next Action
明日から取り組むべきステップを、優先度順に3つ提示する。
- 今日中の行動:ChatGPTの無料アカウントを作る
- 有料版に進む前に、まず触ってみる。30分でいい。
- 今週中の行動:訪問予定の1社について、戦術1の工場設備構造マップをAIで作成し、横断提案の余地を1つ見つけて持参する
- 1社での手応えが、すべての訪問を変える起点になる。
- 今月中の行動:戦術3のGX・補助金月次レターを作成し、担当工場の設備責任者30名に郵送する
- 半年後、工場全体の更新提案が生まれる構造を仕込む。
製品1点ではなく、工場まるごとを支える——その仕事の価値を、AIで再定義する。それが、これからのFA技術商社営業の姿である。


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