金曜の夕方、上司から一言。
「来週の月曜、A社向けの提案資料、頼んだぞ」。
PowerPointは新卒研修以来ほぼ触っていない。
デザインの勉強もしたことがない。
なのに、なぜか自分にお鉢が回ってきた——。
営業3年目あたりで、誰もが一度は通る道である。
結論から言おう。
「営業資料の出来は、デザインセンスでは決まらない。9割は『構成の型』と『情報の取捨選択』で決まる」。
そして今や、その大半は生成AIに下書きさせることができる。
本記事では、デザインの素養がない若手営業が、月曜の朝までに「上司にダメ出しされない資料」を仕上げるための具体的な手順を、AI活用と合わせて解説する。
読み終わる頃には、「資料作成」が嫌な雑務ではなく、自分の市場価値を上げる武器に変わっているはずだ。
なぜ「センスがない自分」に資料作成が回ってくるのか
まず、現実を直視しよう。
あなたに資料作成が振られたのは、デザインスキルを期待されているからではない。
「商談の文脈を一番理解しているのが、現場のあなただから」である。
上司も役員も、A社の担当者がどんな表情で何を言ったかを知らない。
前回の打ち合わせでどのキーワードに食いついたかを知っているのは、現場に同行しているあなただけだ。
つまり、求められているのは「カッコいい資料」ではなく、「商談の文脈が反映された、刺さる資料」である。
この前提に立つと、やるべきことは明確になる。
デザインで悩む前に、まず「何を伝えるか」を固める。
これが9割だ。
ステップ1:作り始める前の「3分の確認」が最も重要
PowerPointを開く前に、必ず上司に以下の3点を確認してほしい。
これを怠ると、月曜の朝に「これ、そういう意味じゃないんだよな」と全リテイクを食らう。
- 誰が読むのか(決裁者向けか、現場担当者向けか)
- 何を意思決定してほしいのか(次回MTGの設定か、稟議のGOサインか)
- 何枚程度で、何分で説明する想定か(提出用か、口頭プレゼン用か)
資料は「作品」ではなく「ビジネス文書」である。
読み手と目的が決まらない資料は、どれだけ綺麗でもゴミになる。
特に③は重要だ。
口頭プレゼン用なら文字は少なく、提出用(メールで送って読んでもらう)なら文字は多めに。
これが逆になっていると、どれだけ頑張っても評価されない。
ステップ2:勝てる営業資料の「黄金の構成」を知る
デザインセンスは無くてもいい。
だが、構成の「型」だけは絶対に外してはいけない。
BtoB営業資料には、ほぼ普遍的に通用する構成パターンが存在する。
提案書の標準構成(10〜15枚版)
| 順番 | スライド | 役割 |
|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 提案タイトル・提案先・自社名・日付 |
| 2 | アジェンダ | 全体の流れを示す |
| 3 | 現状認識・課題整理 | 「御社の課題はこうですよね」と確認 |
| 4 | 課題の深掘り | 放置するとどうなるか(不安喚起) |
| 5 | 解決の方向性 | 課題解決の打ち手の選択肢 |
| 6 | 提案サマリー | 「我々はこれを提案します」を1枚で |
| 7〜9 | 提案詳細 | 機能・サービス・実施内容 |
| 10 | 導入効果 | 数値・事例・ビフォーアフター |
| 11 | 導入スケジュール | いつ何が起こるか |
| 12 | 費用 | 投資額と内訳 |
| 13 | 体制図 | 誰が担当するか |
| 14 | 次のステップ | 読み手に取ってほしい行動 |
| 15 | 会社概要 | 信頼性の補強 |
このうち、最重要は3・4・6・10である。
ここが弱いと、どんなに表紙が綺麗でも受注しない。
逆にここさえ強ければ、表紙が地味でも商談は前に進む。
ステップ3:生成AIに「下書き」を作らせる
ここからが本題だ。
構成が決まったら、各スライドの「メッセージ(言いたいこと)」を生成AIに下書きさせる。
ゼロから書くのと、AIの下書きを直すのとでは、所要時間が3倍違う。
以下のプロンプトをコピーして使ってほしい。
ChatGPT、Claude、Geminiのいずれでも動作する。
# 役割
あなたはBtoB営業のシニアコンサルタントです。
# 状況
私は[業界]向けに[商品・サービス名]を提案する営業担当です。
提案先:[企業名・業種・規模]
担当者:[役職・部署]
これまでの商談で判明した相手の課題:
- [課題1]
- [課題2]
- [課題3]
提案するソリューション:[ソリューション概要]
# 依頼
以下の構成で、提案資料の各スライドに記載すべき
「タイトル」と「本文メッセージ(3行以内)」を作成してください。
1. 表紙
2. 現状認識・課題整理
3. 課題を放置した場合のリスク
4. 提案サマリー
5. 提案詳細(3スライド分)
6. 導入効果(定量・定性)
7. 導入スケジュール
8. 次のステップ
# 制約
- 専門用語は避け、決裁者が3秒で理解できる平易な言葉で
- 数字や具体例を盛り込む
- 各スライドは「結論ファースト」で書く
このプロンプトに、商談メモから拾った課題や相手の発言を入れ込めば、15分程度でスライド全枚分の文章ドラフトが揃う。
あとはそれをPowerPointに流し込み、ファクトを微調整するだけだ。
ステップ4:デザインは「3つのルール」だけ守る
文章ができたら、いよいよ見た目を整える。
デザインの勉強をしたことがなくても、以下の3つさえ守れば「素人くさい資料」にはならない。
ルール1:1スライド1メッセージ
1枚のスライドに、伝えたいことは1つだけ。
あれもこれも詰め込んだ瞬間、受け手の理解は止まる。
スライドの上部にデカく結論(メッセージライン)を書き、その下に根拠となる図表や箇条書きを置く。
これだけで、見やすさが激変する。
ルール2:色は3色まで
ベース色(白)、メイン色(コーポレートカラー)、アクセント色(強調用の赤やオレンジ)の3色に絞る。
カラフルな資料は、それだけで「素人が作った感」が出る。迷ったら、自社ロゴの色+黒+グレー、で十分プロっぽく見える。
ルール3:フォントを統一する
日本語は「メイリオ」か「游ゴシック」、英数字は「Segoe UI」か「Arial」。これで統一しておけば、まず外さない。
ポップ体や明朝体を混ぜた瞬間、ビジネス資料としての信頼性が落ちるので注意してほしい。
ステップ5:仕上げに「AIによるレビュー」をかける
完成したら、PDFに書き出して再度AIにレビューさせよう。
添付した提案資料をBtoB営業の決裁者の視点でレビューしてください。
- 論理の飛躍はないか
- 結論ファーストになっているか
- 数字や根拠が弱い箇所はどこか
- 「で、結局どうしてほしいの?」と言われそうな箇所はどこか
改善ポイントを5つ、優先順位をつけて指摘してください。
PDFを読み込めるAI(Claude、ChatGPT-4以上、Geminiなど)に投げれば、第三者視点での弱点が浮き彫りになる。上司に提出する前に、この「壁打ち」を1回挟むだけで、資料の完成度は2段階上がる。
「センスがない」は、もはや言い訳にならない時代
少し厳しい話をする。
3年前であれば、「デザインセンスがないので資料作成は苦手で…」と言って許される空気があった。
だが今は違う。
生成AIが構成も文章も叩き台を作ってくれる時代に、「資料が作れない」は、単に「AIを使っていない」ことの自白に等しい。
逆に言えば、これは大きなチャンスだ。社内のベテラン営業の多くは、AIを使って資料を作る習慣がない。
3年目のあなたが「AIを使いこなして、ベテランより速く・刺さる資料を作る」ことができれば、それは社内における強力なポジション取りになる。
資料作成は雑務ではない。「商談の解像度」を上司や決裁者に伝える、最強のアウトプット訓練である。
まとめ:Next Action(今週やること)
最後に、明日からの行動を整理する。
- 今週、自分の手元にある営業資料を1つ選び、本記事の「黄金の構成」と照らし合わせてみる。何が抜けているかを書き出す。
- 次に資料作成を依頼されたら、PowerPointを開く前に、上司に「読み手・目的・想定枚数」の3点を確認する。
- 本記事のプロンプトをそのままコピーし、自社の商材で1回試してみる。下書きが15分で揃う体験を、まず1度味わってほしい。
「営業資料作っといて」は、面倒な雑務ではない。
あなたが商談の文脈を最も理解している証であり、AIを使えば、それを最短で形にできる。
センスではなく「型」で勝つ営業に、今日から切り替えていこう。


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