「うちも営業AIエージェントを入れるべきではないか」。経営会議でそう振られ、ベンダー資料を数社ぶん取り寄せたものの、どれも「AIが営業を代行」「商談を自動化」と似た言葉が並び、何がどう違うのか見当がつかない。AI SDR、営業AIエージェント、商談解析AI。横文字だけが増え、比較の軸が定まらないまま検討が止まる。そんな営業部長は少なくない。
結論から言う。営業AIエージェントの比較は、機能の多さではなく どの工程を任せるか で決まる。新規開拓の一次接触を自動化するのがAI SDRであり、すでに動いている商談の「前・中・後」を支えるのが営業AIエージェントだ。この線を一本引くだけで、乱立するツールは整理でき、自社に要るものと要らないものが見えてくる。
この記事では、当サイトのツールDBに収録した国産6ツールを、得意な工程・料金・無料で試せるか・向く組織で一覧にし、AI SDRとの違い、各ツールの特徴、工程別・規模別の選び方、導入で失敗しないための注意点までを一気に示す。どのツールにどの順で問い合わせるべきかが、読み終えるころには決まっているはずだ。
先に結論:比較表
まず全体像だ。当サイトのツールDBの登録情報をもとにまとめた。料金は変動しうるため、最新は各社の公式情報で確認してほしい。
| ツール名 | 得意な工程(商談前/中/後) | 料金の目安 | 無料で試せるか | 向いている組織 |
|---|---|---|---|---|
| AI Worker SalesAgent | 商談前・中・後(企業調査、商談中の記録、議事録・SFA入力を一気通貫) | 月額・初期費用とも要問合せ(個別見積もり) | 記載なし(要問合せ) | 商談準備から報告まで仕組み化したい中堅〜大企業 |
| ferret Sales Agent | 商談前・後(企業リサーチ、議事録・SFA入力、フォローメール下書き) | 月額4,000円/ユーザー(リリース時報道ベース)、初期費用は要問合せ | 記載なし(乗り換えキャンペーンの無料特典あり) | SFAの入力率が上がらず形骸化している組織 |
| ゴリラセールスAI商談 | 商談前(問い合わせ直後のヒアリングから日程調整までAIが対応) | 月額は要問合せ(月単位契約)、初期費用50,000円(税別・スタンダードプラン) | 記載なし(資料ダウンロード・ウェビナー経由で問合せ) | 問い合わせの一次対応が翌日以降になりがちな会社 |
| AmiVoice SalesAgent | 商談中・後(リアルタイム抽出、商談後6項目の自動分析) | 月額・初期費用とも要問合せ | あり(リリース記念の無償トライアル。時期により変動) | 商談中の抜け漏れを防ぎ、新人を底上げしたい組織 |
| アポドリ | 商談前(リスト作成からアプローチ実行・分析まで自律遂行) | 要問合せ(AI稼働量に応じた従量課金、成果報酬型にも対応) | なし | 人を増やさずアウトバウンドの商談数を増やしたい企業 |
| Brain Plus for Sales | 商談前・中・後(AIロープレ、商談中サジェスト、振り返り) | 月額・初期費用とも要問合せ | なし | 勝ちパターンを組織に浸透させたい育成重視のチーム |
表が示す事実は3つ。料金を公開しているのはferret Sales Agentの月額とゴリラセールスAI商談の初期費用だけで、残りは要問合せ。無料で試せると明記されているのはAmiVoice SalesAgentのみ。そして同じ「営業AIエージェント」でも、担う工程は商談前の獲得型から商談中の支援型まで大きくばらける。だから「一番良いツール」探しは出発点として誤りだ。自社が詰まっている工程を決め、それを担うツールに候補を絞る。6ツール以外の候補は営業AIツール比較DBで料金・評価から絞り込める。
営業AIエージェントとは何か?AI SDRと何が違うのか?
営業AIエージェントとは、指示された作業を一つずつこなすAIではなく 目的を与えると必要な作業を自ら組み立てて進めるAI を営業の工程に組み込んだものだ。企業調査、商談中の記録、議事録、SFA入力、フォローメール。営業担当が商談の合間に手で回していた仕事を、まとまりごと引き受ける。混同されやすいのがAI SDRだ。整理はシンプルである。
| 観点 | AI SDR | 営業AIエージェント |
|---|---|---|
| 主な役割 | 新規開拓の一次接触を自動化する | 動いている商談の前・中・後を支援する |
| 担う工程 | リスト作成、アプローチ、問い合わせ対応、アポ獲得 | 事前調査、商談中の記録・助言、議事録、SFA入力、振り返り |
| 成果の測り方 | 商談数、有効アポ率 | 受注率、商談品質、SFA入力率、準備・報告時間 |
| 本記事の6ツールでは | アポドリ、ゴリラセールスAI商談 | AI Worker SalesAgent、ferret Sales Agent、AmiVoice SalesAgent、Brain Plus for Sales |
AI SDRは「商談を作る」AI、営業AIエージェントは「商談を勝たせる」AIだ。ただ実際の検討では両者は同じ稟議のテーブルに並ぶため、本記事ではAI SDRに近い2ツールもあえて同じ表に載せ、工程で切り分けて論じる。なお日本語の文脈ではSDRを問い合わせ対応(インバウンド)、BDRを新規開拓(アウトバウンド)と使い分けることが多く、ゴリラセールスAI商談は前者、アポドリは後者に近い。AI SDRの仕組みと主要ツールは別記事AI SDRとは?人間の営業を代替するAI営業自動化の全貌と主要ツール比較にまとめた。新規開拓の自動化が本命なら、そちらを先に読んでほしい。
6ツールの特徴:それぞれ何が得意で、誰に向くのか?
1ツールずつ、得意な工程と向き不向きを見ていく。評価点は当サイトの編集部評価(5点満点)だ。
AI Worker SalesAgent(株式会社AI Shift)
サイバーエージェントグループのAI Shiftが提供する、商談の前・中・後を一気通貫で支える営業AIエージェントだ。商談前は企業調査レポートを自動作成し、商談中は重要事項をリアルタイムに抽出・記録、商談後は議事録作成からSFA入力までを自動化する。営業プロセス全体を仕組みで底上げしたい中堅〜大企業や、AIエージェント活用を全社方針とする企業に向く。料金は月額・初期費用とも要問合せの個別見積もりで、公開料金で稟議を通したい中小企業や、議事録など単機能から小さく始めたいチームには不向きだ。編集部評価は3.2。詳細はAI Worker SalesAgentのDBページへ。
ferret Sales Agent(株式会社ベーシック)
「SFAを入れたのに入力されない」という定着問題に、入力という作業そのものをなくす発想で答える。商談前の企業リサーチを自動でレポート化し、商談後は議事録作成とSFA入力を自動化して事務作業を約1分に、フォローメールの下書きまで用意する。月額4,000円/ユーザーはリリース時の報道ベースの価格で、6ツール中では数少ない公開料金だ。最新は公式で確認したいが、入力率の低さに悩む組織なら試算する価値がある。既存SFAと別のエージェントを増やしたくない企業や、オンプレミス級のセキュリティ要件がある企業には向かない。編集部評価は3.8。詳細はferret Sales AgentのDBページへ。
ゴリラセールスAI商談(株式会社アスレバ)
問い合わせが発生した瞬間にAIがヒアリングを始め、課題整理から日程調整までをリアルタイムで自動対応する。「AIが商談する」という一歩踏み込んだ設計が特徴で、商談者が足りずインバウンドを取りこぼしている組織や、問い合わせの一次対応が翌日以降になりがちな会社に向く。料金は月額が要問合せ(月単位契約)、初期費用は50,000円(税別・スタンダードプラン)。実績はこれからのため、導入事例を見てから判断したい慎重派や、問い合わせ経由の商談が少ない対面中心の業態には向かない。編集部評価は3.0。実績公開を待つか、小さく試すのが現実的だ。詳細はゴリラセールスAI商談のDBページへ。
AmiVoice SalesAgent(株式会社アドバンスト・メディア)
25年超の日本語音声認識AmiVoiceを基盤に、商談中はAIがリアルタイムで重要事項を抽出して支援し、商談後は6項目を自動分析してふりかえりを効率化する。議事録AIの次を行く「商談中支援」という新カテゴリの製品版で、確認漏れの防止は新人育成にも効く。商談中の抜け漏れをその場で防ぎたい組織や、新人の商談品質を底上げしたいチームに向く。料金は月額・初期費用とも要問合せだが、リリース記念の無償トライアルキャンペーンがある(時期により変動)。議事録の自動化だけ始めたい小規模チームには向かない。編集部評価は3.8。詳細はAmiVoice SalesAgentのDBページへ。
アポドリ(株式会社Algomatic)
商談獲得に特化したAI営業エージェントで、リスト作成、アプローチ実行、活動管理、分析までを自律的に遂行する。GPT、Claude、Geminiなどを組み合わせた独自の営業AIモデルをターゲット・商材・担当者別にカスタマイズでき、使うほど精度が上がる。料金は要問合せだが、AI稼働量に応じた従量課金と成果報酬型に対応し、人を増やさずアウトバウンドの商談数を増やしたい企業に向く。半面、料金非公開で予算を固定化しづらい企業や、AIの学習・運用設計に伴走できる体制がない企業には向かない。初期チューニングが成果を左右する。編集部評価は4.0で6ツール中もっとも高い。詳細はアポドリのDBページへ。
Brain Plus for Sales(株式会社pluszero)
ソフトブレーン・サービスとpluszeroが共同提供するAI商談シミュレーターだ。AIロープレで初心者からベテランまで難易度を変えて練習でき、商談中はリアルタイムサジェストで提案や質問のヒントを表示し、商談準備支援AIと振り返りAIで準備から議事録作成までを支える。トップセールスの行動分析に基づく5ステップ70スキルでスキルを客観評価でき、専任カスタマーサクセスの伴走が定着を後押しする。勝ちパターンを組織に浸透させたい育成重視のチーム向けだ。料金は月額・初期費用とも要問合せで無料トライアルはなく、導入実績はこれからだ。編集部評価は3.8。詳細はBrain Plus for SalesのDBページへ。
どう選ぶべきか?
軸は2つ。詰まっている工程で候補を絞り、組織の規模と稟議の通し方で決める。
工程別:どこで詰まっているかで第一候補は決まる
| 詰まっている工程 | 典型的な症状 | 第一候補 | 次点 |
|---|---|---|---|
| 商談前(新規開拓) | 人手が足りず商談数が伸びない | アポドリ | ゴリラセールスAI商談 |
| 商談前(問い合わせ対応) | 初動が翌日以降になり温度が冷める | ゴリラセールスAI商談 | 該当なし |
| 商談前(準備) | 企業調査に時間がかかる | ferret Sales Agent | AI Worker SalesAgent |
| 商談中 | 確認漏れが多く新人の品質が安定しない | AmiVoice SalesAgent | Brain Plus for Sales |
| 商談後 | 議事録とSFA入力が回らない | ferret Sales Agent | AI Worker SalesAgent |
| 前・中・後すべて | 勝ちパターンを組織の型にしたい | Brain Plus for Sales | AI Worker SalesAgent |
商談前の準備と商談後の事務は、ferret Sales AgentとAI Worker SalesAgentのどちらも担える。公開料金で小さく始めるなら前者、全社方針で前・中・後を一気通貫させるなら後者が軸だ。
規模別:稟議の通し方で決める
| 組織の状況 | 向くツール | 理由 |
|---|---|---|
| 中小企業。公開料金で稟議を通したい | ferret Sales Agent | 月額4,000円/ユーザー(報道ベース)という試算の起点がある |
| 中小〜中堅。まず無料で触りたい | AmiVoice SalesAgent | 無償トライアルの機会があれば実地で試せる |
| 中堅〜大企業。AIエージェント活用が全社方針 | AI Worker SalesAgent | 前・中・後の一気通貫と、サイバーエージェントグループの開発力 |
| 中堅。育成と型化を伴走つきで進めたい | Brain Plus for Sales | 専任カスタマーサクセスが定着を支援 |
| 人を増やさず商談数を増やしたい | アポドリ | 従量課金・成果報酬型で固定費を抑えられる |
| インバウンドの取りこぼしが多い | ゴリラセールスAI商談 | 問い合わせの瞬間からAIが対応。初期費用は公開されている |
共通する原則は 最初から全工程を任せようとしない ことだ。一番痛い工程を一つ選び、そこを担うツールから始める。営業プロセス全体をどの順で自動化するかは営業自動化の全体像と進め方をまとめたガイドで整理している。
導入で失敗しないための注意点は何か?
つまずくのは機能の優劣ではなく、料金・検証設計・データ連携の3点だ。
料金非公開が前提。稟議は見積もり取得から逆算する
6ツール中、月額を公開しているのはferret Sales Agentのみ、初期費用を公開しているのはゴリラセールスAI商談のみだ。残りは要問合せで、アポドリのように従量課金や成果報酬型を採る例もある。公開価格を並べる比較は通用しない。候補2〜3社から同じ条件(ユーザー数、月間商談数、連携したいSFA)で見積もりを取り、そこで初めて横並びの表を作る。1社の提示価格だけで判断すると、相場感のないまま契約することになる。
PoCは対象・期間・指標・比較対照の4点を先に決める
新しいサービスが多く、公開されている導入実績はまだ厚くない。だからこそ小規模検証(PoC)の設計が成否を分ける。決めるべきは、対象(どのチームのどの工程か)、期間(1〜3か月で区切る)、指標(SFA入力率、準備時間、商談化率、確認漏れ件数のどれか)、比較対照(導入前の数値と何を比べるか)の4点だ。決めずに「とりあえず使ってみる」と、良かった気はするが数字で語れないという最悪の結果になる。無償トライアルがあるAmiVoice SalesAgentも、設計を先に済ませてから申し込みたい。
データ連携とセキュリティ要件は最初に確認する
営業AIエージェントの価値は、SFA・CRM、カレンダー、Web会議ツールとつながって初めて出る。既存SFAに自動連携できるか、商談音声をどこで処理・保存するか、社内のセキュリティ基準を満たすかは、機能比較の前に潰しておく論点だ。連携できないツールは、どれだけ賢くても二重入力の原因になる。加えて、アポドリのように初期チューニングが成果を左右するツールでは、AIの学習・運用設計に伴走する担当者が社内に要る。選定と同時に、運用の責任者を決めておくことだ。
よくある質問
営業AIエージェントとAI SDRは、どちらを先に入れるべきか?
商談数が足りないならAI SDR、商談はあるのに受注率や報告が回らないなら営業AIエージェントだ。工程で決める。入口が細い会社が商談支援から入れても効果は薄く、商談が回っていない会社が獲得だけ増やしても現場が溢れる。自社の数字で詰まっている工程を特定し、そこから入れる。
料金が非公開のツールは、どうやって比較すればよいか?
同じ条件で相見積もりを取る。ユーザー数、月間商談数、連携したいSFA、セキュリティ要件を1枚にまとめて候補2〜3社に渡し、横並びの表を作る。公開料金があるferret Sales Agentの月額4,000円/ユーザー(報道ベース)や、ゴリラセールスAI商談の初期費用50,000円(税別)は、相場感をつかむ起点になる。
すでに議事録AIを使っていれば、営業AIエージェントは不要か?
不要ではない。議事録AIは商談後の記録を作るが、営業AIエージェントは商談前の調査、商談中のリアルタイム助言、SFAへの自動入力、振り返り分析まで担う。ただし議事録の自動化だけが目的なら、いま使っているツールで十分な場合も多い。何を得たいかを工程で言語化してから検討する。
Next Action:今日やる3つ
資料を集めるより先に、自社の詰まりを特定する。今日やることは3つだ。
- 直近1か月の商談を振り返り、商談前・中・後のどこで一番時間と機会を失っているかを1つ選ぶ。SFA入力率、準備時間、問い合わせへの初動時間など、手元の数字で言えるものがよい。
- その工程に対応するツールを上の工程別の表から2〜3社選び、DBページで向き不向きを確認したうえで、同じ条件(ユーザー数・月間商談数・連携SFA・セキュリティ要件)で見積もりと資料を請求する。
- PoCの4点(対象・期間・指標・比較対照)をA4一枚に書き出し、見積もりが届く前に社内で合意しておく。
営業AIエージェントは、機能の多さで選ぶと失敗する。任せる工程を決め、数字で検証できる形で小さく始める。それが、乱立するツールの中で迷子にならないための羅針盤だ。


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