ChatGPTのプロジェクト機能を営業で使う|案件ごとにAIを育てる

ChatGPTのプロジェクト機能の営業活用を解説するサムネイル

案件Aの見積もり方針を相談したいだけなのに、ChatGPTを開くたびに「当社は営業支援ツールのベンダーで、相手は従業員500名の部品メーカー。先月の商談では価格がネックになり…」と、毎回ゼロから背景を説明し直していないだろうか。しかも過去のやり取りは日々の雑多な会話に埋もれ、先週作らせた切り返しトークがどのチャットにあったかすら思い出せない。

結論から言う。その手間はChatGPTのプロジェクト機能で消せる。案件ごとに会話・資料・指示をひとつの箱にまとめれば、背景は最初に一度セットするだけでよい。以降はどの会話も文脈を引き継いだ状態から始まる。いわば案件ごとの専属AIを育てる仕組みであり、使うたびに賢くなる作戦室を持つことに等しい。

この記事では、OpenAIの公式ヘルプで確認できる仕様を踏まえたうえで、営業での活用3パターン、案件プロジェクトの作り方、コピペで使える指示文テンプレート2本、そして入れてはいけない情報の線引きまでを一気に示す。読み終えたら15分で最初のプロジェクトを立ち上げられるはずだ。

目次

ChatGPTのプロジェクト機能とは何か?

プロジェクトとは、会話・ファイル・指示文を案件やテーマの単位でひとまとめにできる機能だ。OpenAIの公式ヘルプでは、特定の仕事のための専用スペースと位置づけられており、同じ背景説明を会話のたびに繰り返さずに済む点が利点として説明されている。

できることは大きく3つある。

  1. 会話をまとめる。プロジェクト内で新しいチャットを始められるほか、既存のチャットをドラッグするか、チャットのメニューからプロジェクトへ移動できる。移動した会話は、そのプロジェクトの指示とファイルを引き継ぐ。
  2. ファイルを登録する。PDF・スプレッドシート・文書・画像などを参照資料として置いておけ、プロジェクト内の会話はその内容を踏まえて答える。
  3. プロジェクト指示を書く。そのプロジェクト内の会話だけに効く指示文を設定できる。

肝は3つ目だ。ChatGPTには全会話に効くカスタム指示もあるが、あちらはアカウント全体への設定である。案件Aの事情をそこへ書き込めば、案件Bの会話まで引きずられる。プロジェクト指示なら、前提を案件単位で作り分けられる。つまりアカウント全体に効くのがカスタム指示で、案件単位で効くのがプロジェクト指示という関係だ。

対応プランは幅広く、無料プランでも利用できる。ただしプロジェクトに登録できるファイル数はプランで異なり、公式ヘルプでは無料プランは5、Go・Plusは25、Pro・Business・Enterprise・Eduは40と案内されている。この種の数値や提供条件は更新が速いため、導入前に公式ヘルプで最新の内容を確認してほしい。

営業ではどう使うのか?鉄板の3パターン

プロジェクトの価値は、資料と指示を入れた瞬間ではなく、同じ箱の中で相談を重ねるほど回答の精度が上がっていくところにある。営業での使い方は、まず次の3パターンで考えるとよい。

パターン入れるもの聞くこと(例)
①大型案件の作戦室提案書ドラフト、商談議事録、先方の組織図、要件メモ次回商談の論点整理、決裁者向けサマリー作成、想定される反論と切り返し
②商材別の想定問答機製品資料、料金表、導入事例、よくある質問集顧客の質問への回答案、競合比較を聞かれたときの答え方、業界別の訴求ポイント
③自分の型置き場メールテンプレート、トークスクリプト、受注案件の振り返りメモテンプレのA社向け書き換え、新商材用スクリプトへの改変、勝ちパターンの横展開

①は金額の大きい案件に1つずつ作る。議事録と提案書を読み込ませた状態で「次回、先方の情シス部長を落とすには何を詰めるべきか」と壁打ちすれば、一般論ではなく、その案件の経緯を踏まえた答えが返る。

②は案件ではなく商材の単位で作る。製品資料を入れておけば、顧客からの質問にどう答えるかを移動中に確認できる想定問答機になる。新人への教育コストを下げる効果も大きい。

③は自分専用の武器庫だ。散らばりがちなテンプレやスクリプトを一箇所に集め、案件に合わせた書き換えをAIにやらせる。マネージャーであれば、チームの標準トークを置いてメンバーに展開する土台にもなる。

案件プロジェクトはどう作るのか?4つのステップ

作ること自体は数分で終わる。差がつくのは手順の2番目、指示文の設計だ。

Step1|プロジェクトを作成する

サイドバーからプロジェクトを新規作成し、案件名を付ける。名前は「A社_基幹システム更改」のように、後から検索しやすい形にしておく。

Step2|指示文を書く

プロジェクトの設定画面から指示を追加する。ここに案件の背景・自社の立場・出力の流儀を書き込む。この指示はプロジェクト内の全会話に自動で効くため、いわば毎回の背景説明を肩代わりする心臓部になる。テンプレートは次の章に用意した。

Step3|資料を入れる

議事録・提案書・製品資料など、相談の根拠になるファイルを登録する。ここで必ず、入れてよい情報かどうかの確認を挟む。判断基準は後述する。ファイル数には上限があるため、効く資料だけを厳選し、議事録は商談のたびに最新版へ差し替える。

Step4|運用する

その案件に関する相談は、すべてこのプロジェクトの中で行う。すでに外で始めてしまった会話も、ドラッグまたはメニューからの移動で取り込める。運用が続くほど、プロジェクト内の過去会話が文脈として蓄積され、答えの精度が上がっていく。

プロジェクト指示文はどう書くのか?テンプレ2本

指示文は、案件の背景・AIの役割・出力の流儀の3要素で書く。まずは大型案件の作戦室用だ。〔 〕の中を自分の案件に差し替えて使ってほしい。

# この案件について
- 案件名: 〔例: A社 営業DX刷新プロジェクト〕
- 顧客: 〔例: 従業員500名の自動車部品メーカー。SFA導入済みだが現場に定着していない〕
- 自社の商材と立場: 〔例: 営業支援SaaSのベンダー。2次提案中で、競合1社と比較されている〕
- 現在のフェーズとゴール: 〔例: 来月の役員プレゼンで予算の内示を取ること〕

# あなたの役割
この案件専属の営業参謀として振る舞うこと。一般論ではなく、上記の背景と
アップロード済みの議事録・提案書を前提に答えること。

# 出力の流儀
- 結論から書く。前置きは不要
- 提案は、そのまま商談で口に出せる表現で示す
- リスクや弱点は遠慮なく指摘する
- 議事録やファイルに根拠がある場合は、どの資料に基づくかを添える

2本目は商材別の想定問答機用である。こちらは正確さが命なので、分からないときの振る舞いを必ず定義しておく。

# このプロジェクトの目的
自社商材〔例: 営業支援SaaS「○○」〕への顧客からの質問に対し、
営業担当者がそのまま使える回答案を作る。

# 回答のルール
- 回答は、登録済みの製品資料・料金表・導入事例の記載に基づくこと
- 資料に記載のない仕様・価格・数値は推測で答えず、
  「資料に記載がないため要確認」と明示すること
- 回答は3部構成で出す:
  (1) 顧客にそのまま話せる回答文
  (2) 根拠となる資料の該当箇所
  (3) 言ってはいけないNG表現
- 想定する質問者は〔例: 製造業の情報システム部長〕。専門用語はかみ砕くこと

推測で答えさせない一文を入れるだけで、想定問答機の信頼性は大きく変わる。営業の現場でAIの誤答が致命傷になるのは、たいてい価格と仕様の質問だからだ。

入れてはいけない情報は何か?

プロジェクトの運用で最も注意すべき点がここだ。通常のチャットに一度だけ資料を貼る使い方と違い、プロジェクトに登録したファイルは置きっぱなしになり、会話のたびに参照され続ける。だからこそ、入れる前の線引きが要る。

原則は3つある。第一に、顧客から預かった機密資料は入れない。NDAの対象になっている提案依頼書や、先方の内部資料はその典型だ。第二に、個人情報は入れない。名刺リストや担当者の連絡先を含むファイルは、匿名化するか対象から外す。第三に、自社の未公開情報も、社内規程で許可された範囲に限る。

そのうえで、設定の確認を怠らないこと。個人向けプランでは、設定のデータコントロールから、入力内容をモデルの学習に使わせない選択ができる。法人向けプランについては、ビジネスデータを既定でモデルの学習に使わないとOpenAIは説明している。いずれにせよアップロードの前に社内の生成AI利用規程と自分のアカウント設定を確認するのが鉄則だ。判断に迷う情報が出てきたら、生成AIに入力してよい情報・NGな情報の早見表で確認してから入れてほしい。

カスタム指示・メモリとどう使い分けるか?

似た機能が3つあるため、ここで整理しておく。効く範囲が違うだけで、役割は明確に分かれる。

機能効く範囲覚えさせる内容営業での使いどころ
カスタム指示アカウント全体のすべての会話職種・商材・文体の好みなど、どの会話でも変わらない前提自分という営業の土台づくり
メモリ会話をまたいで参照される記憶会話の中からChatGPTが拾って覚えた事実長期的な好みや状況の引き継ぎ
プロジェクトそのプロジェクト内の会話のみ案件の背景・資料・出力ルール案件・商材ごとの専属AI化

使い分けの考え方はシンプルで、土台はカスタム指示、案件の個別文脈はプロジェクトに分担させる。自分の職種や好みの文体といった不変の前提はカスタム指示に置き、案件固有の事情はすべてプロジェクト側に寄せる。土台側の書き方は営業向けカスタム指示の設定方法で詳しく解説している。

メモリとの関係も公式ヘルプで確認できる。プロジェクトの作成時にプロジェクト限定メモリを有効にすると、その中の会話は同じプロジェクト内の他の会話を文脈として参照する一方、プロジェクト外で保存された記憶は使わなくなる。案件の情報を他の仕事と混ぜたくない場合や、案件ごとの境界をはっきり保ちたい場合に有効な設定だ。

よくある質問

無料プランでもプロジェクト機能は使えるか?

使える。公式ヘルプによれば、プロジェクトは無料プランを含む各プランで提供されており、無料プランでは1プロジェクトに登録できるファイルが5までと案内されている。まず無料で試し、資料を増やしたくなったら有料化を検討すればよい。課金の判断基準はChatGPT無料版と有料版の営業向け比較にまとめた。

個人のPlusと法人向けプランでは何が違うか?

機能としてのプロジェクトは同系だが、扱える規模と情報管理が違う。公式ヘルプでは、法人向けプランは1プロジェクトのファイル上限が大きいと案内されているうえ、TeamやBusinessと呼ばれる法人向けプランではビジネスデータを既定でモデルの学習に使わないとされている。顧客情報に近い資料を日常的に扱うなら、個人アカウントの工夫で粘るより、法人契約を会社に諮るのが筋だ。細かな条件は公式ヘルプで最新を確認してほしい。

案件が終わったらプロジェクトはどうするか?

すぐ消さず、先に資産化する。第一に、指示文をコピーして次の案件プロジェクトの雛形にする。第二に、効果のあった切り返しや提案の言い回しを、型置き場のプロジェクトへ転記する。そのうえで、顧客に関わるファイルは残しておく理由がなければ削除する。案件は終わっても、そこで育てた型は次の案件で使い回せる。

Next Action:今日やる3つ

読んだだけでは専属AIは育たない。今日、次の3つだけやってほしい。

  1. いちばん動いている案件を1つ選び、プロジェクトを作って本記事の指示文テンプレ1本目を差し替えて貼る。ここまで15分あれば足りる。
  2. 入れる資料を3点だけ選ぶ。登録する前に、社内の生成AI規程と学習利用の設定を必ず確認する。
  3. 最初の質問として「この案件の次回商談で詰めるべき論点を5つ挙げてほしい」と投げ、専属AIに初仕事をさせる。

案件のたびに同じ説明を繰り返す時間は、今日で終わりにできる。次の商談準備から、育てたプロジェクトに働いてもらおう。

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