「来週新刊出るので、平台に置いてもらえませんか」
「ごめん、今うちの棚も限界だから、また今度ね」
——書店の事務所で、こう返された経験は、出版社の書店営業なら数え切れないほどあるはずだ。
出版社・書店営業の現実は、世間が想像するよりはるかに地殻変動の真っただ中にある。
出版科学研究所によれば、紙の出版物の売上は1996年の2兆6,564億円ピークから2024年には1兆56億円へ、約4割減となった。書籍は5,937億円、雑誌は4,119億円で、紙単独で見ればピーク比約6割減だ。
そして決定打が、業界全体の構造崩壊だ。
- 書店数は2000年の21,654店から2020年に11,024店、20年で半減——出版文化産業振興財団の調査による
- 書店ゼロ自治体は26.2%に達する——2022年9月時点で、地域から書店が消えていく
- 業界平均返本率約40%——出版社が出した本の4割が売れ残って戻ってくる構造
- 物流2024年問題が直撃: トラックドライバーの時間外労働規制で配本困難、返本回収も困難に
- 送品コスト: 2011年比2.2倍(2023年)、定価転嫁は書籍14%増・雑誌29%増にとどまり追いつかず
- 雑誌依存モデルの崩壊: 雑誌売上1996年1.5兆円→2024年約4,000億円、配送網を支えた共同配送の前提が崩れる
- 読書離れ: 1ヶ月に本を1冊も読まない人62.6%(文化庁2023年、5年前から15.3pt上昇)
- 電子出版は成長: 2024年5,660億円(5.8%増)、電子コミック単体で5,000億円突破、コロナ前から倍増
そんな中、出版社の書店営業の現場は意外なほど変わっていない。
担当エリアの書店ルート訪問、平台位置の交渉、POPやフェアの提案、新刊の説明、書店員との立ち話、取次本部での配本交渉
——10年前と本質的には同じ業務だ。
ところが、顧客である書店は急速に変わっている。閉店ラッシュ、書店ゼロ自治体の拡大、書籍+αへの業態転換、雑誌売場の縮小、選書型独立系書店の新興。従来の御用聞き型書店営業のままでは、顧客と一緒に沈むしかない構造になってきている。
そして業界全体でも変化が始まっている。紀伊國屋書店・CCC・日販が組んだブックセラーズ&カンパニーによる書店主導改革、経済産業省の書店振興プロジェクトチームの発足、講談社・読売新聞による書店活性化提言——出版社側も、書店を守る側に回らないと自社も成立しない時代だ。
結論から言う。
出版社・書店営業こそ、生成AIで景色が変わる仕事である。
理由は3つある。
①書店ごとに違う客層・売れ筋データ・棚構成を踏まえた個別フェア提案をAIで量産できる
②取次・書店本部との交渉で必要な販売データ・市場動向分析をAIで圧縮できる
③編集・宣伝・販売の垣根を越えた書店向け企画立案がAIで可能になる
——この3条件が揃う仕事は、AIとの相性が極めて良い。
本記事では、出版社の書店営業・取次営業・広告営業の現場で明日から使える生成AI活用術を、5つの戦術として提示する。読み終えたとき、新刊カタログ置きで終わる訪問から、書店の売場づくりを一緒に考えるパートナーへ切り替える地図が手に入っているはずだ。
そしてこの第10巻は、本シリーズ「業界別・営業AI攻略書」の最終巻でもある。全10業界を通じて見えてきた共通の構造変化を、最後に整理する。
出版社・書店営業の現実:顧客が沈みつつある中で何を提案するか
出版社の営業3類型を理解する
まず前提を整理する。出版社の営業は、対象によって3つに分かれる。
| 営業類型 | 対象 | 主な業務 | 響くもの |
|---|---|---|---|
| 書店営業 | 書店本部、店舗、店長、書店員 | 新刊案内、棚位置交渉、POP・フェア提案、販促企画 | 売れる根拠、店舗別データ、フェア企画、書店員の関心 |
| 取次営業 | 日販・トーハン等の取次担当者 | 配本数交渉、新刊事前注文の獲得、返品調整 | 販売予測データ、過去類書実績、メディア露出計画 |
| 広告営業 | 雑誌広告主、代理店 | 雑誌広告枠の販売、タイアップ企画 | 読者層データ、媒体価値、競合誌比較 |
つまり、1人の営業担当者は、本来3種類の全く違う営業を兼任することも多い。中小出版社では特にそうだ。
書店のタイプ別の意思決定構造
書店営業の中でも、書店のタイプによって意思決定構造が違う。
| 書店のタイプ | 意思決定者 | 検討期間 | 響くもの |
|---|---|---|---|
| 大手書店チェーン本部(紀伊國屋、有隣堂、CCC等) | 本部MD、ジャンル担当バイヤー | 1〜3ヶ月 | 全店展開可能性、販促計画、メディア露出、ジャンル占有率 |
| 中堅書店チェーン店舗(複数店舗) | 店長+ジャンル担当 | 1ヶ月以内 | 店舗客層との適合、棚効率、競合店との差別化 |
| 地域独立系書店 | 店主+スタッフ | 即決〜2週間 | 店主の選書眼への共鳴、地域性、リアル販促 |
| 駅前小規模書店 | 店長 | 即決 | 売れ筋への即応性、コミック・雑誌の確実性 |
| ネット書店(Amazon、楽天、honto等) | バイヤー+システム | 自動配本+本部交渉 | データ、SEO、レビュー、書影、商品ページ |
つまり、1人の書店営業が、5種類の全く違う顧客を同時に回しているような状況だ。同じ新刊を売るにしても、刺さる切り口も提案の組み立ても全く違う。
営業現場の独自構造
出版社・書店営業には、他業界と比較しても極めて特殊な構造がある。
- 再販制度と委託制度: 価格は出版社が決定、書店は返本可能。返本率約40%は構造的問題
- 取次という中間流通: 出版社→取次→書店という独自の流通、配本数は取次が決める
- 新刊サイクルの速さ: 月に数百〜数千点の新刊が流通、棚は常に入れ替わる
- 書店員という独自の存在: 単なる小売スタッフではなく、選書・推し・POP作成の文化的担い手
- メディアミックス連動: 映像化、コミカライズ、ドラマ化が売上を一変させる
- 電子書籍は別ルート: 紙の書店営業とは別系統、出版社のデジタル営業部門が担当
- 学校・図書館・専門領域営業: 教科書、教材、学術書、医療系コンテンツなどは独自営業
書店の売場づくりは、書店員と出版社営業の信頼関係で決まる。同じ条件のフェア提案でも、誰が持ってきたかで結果が違う。書店員が「この営業の話なら聞きたい」と思う関係を作れるかどうか、それがすべてだ。
そして、書店ごとの個別提案・データ分析・販促企画は、生成AIで武装すれば中小出版社の営業1人でも実装できる。これが本記事の出発点だ。
戦術1:担当書店ごとの個別フェア提案をAIで量産する
よくある失敗:同じカタログを全書店に配る
新人〜中堅の書店営業がやりがちな失敗は、新刊カタログを全書店に同じように配ることだ。これは、書店員からすれば「またこの営業か」で終わる。
書店員が本当に求めているのは、自分の店の客層・棚構成・売れ筋を踏まえた個別提案だ。
- この店の主要客層は40代女性の文芸ファン
- この店はビジネス書が強く、自己啓発系が動く
- この店は学参が中心、駅前で受験生が多い
- この店は子ども向け絵本フェアで地域に親しまれている
- この店の店長は推理小説マニアで、海外ミステリーを推している
これを担当書店50店分、人力で常時把握してフェア提案するのは現実的でない。
AI活用:担当書店マップを構造化する
あなたは出版社の書店営業コンサルタントです。
担当エリアの書店リスト50店について、以下の軸で分類してください。
【入力情報】
- 顧客台帳(書店名、過去3年の自社書籍販売実績、棚配置の写真メモ、書店員の名前と趣向)
- 公開情報(書店のSNS、レビュー、店舗紹介、フェア履歴、書店員POP)
【分類してほしい軸】
- 規模・形態:大手チェーン本部 / チェーン店舗 / 地域独立系 / 駅前小規模 / 専門書系
- 主要客層:年齢層、男女比、ファミリー比率
- 強いジャンル:文芸 / ビジネス / 学参 / 児童書 / コミック / 専門書
- 棚の傾向:平台中心 / 棚差し中心 / 面陳重視
- 書店員の個性:選書型 / バランス型 / 売れ筋重視
- フェア受容度:オリジナルフェア企画可 / メーカー企画のみ / フェア余地なし
【各書店について出してほしい内容】
- この書店の客層に刺さりそうな自社書籍TOP10
- 推奨フェアテーマ3案
- 持参すべきPOPデザインの方向性
- 書店員との会話の起点になるトピック
- NGトーク(この店に絶対響かない提案)
【出力フォーマット】
- 50書店の構造マップ
- 攻略優先度マトリクス
- 各書店の典型的な訪問シナリオ
- 月次フェア提案カレンダー
これだけで、新刊カタログ置きの連続から、書店ごとの個別パートナーへ変わる。書店員から「この営業の提案は具体的でいい」と認識されれば、棚位置交渉も明らかに通りやすくなる。
一歩進んだ使い方:店舗別フェア企画書を量産する
●●書店(●●店、●●エリア)について、来月のフェア企画書を作成してください。
【入力情報】
- 書店の客層・棚特性(上記マップから)
- 自社の新刊・既刊リスト(提供)
- 競合出版社の話題書
- 季節要因(梅雨、夏休み、年末年始等)
- メディア露出予定(自社書籍のテレビ・新聞・SNS露出計画)
【出力フォーマット】
1. フェアタイトル案3つ(書店員が乗り気になるタイトル)
2. 選書リスト15冊(自社中心、他社含む現実的構成)
3. フェア期間と推奨設置場所
4. POPの構成案
5. 想定売上見込み
6. 書店側の負担工数の見積もり
7. 同時提案できる販促物(ポスター、ツールキット)
ここまで具体化された企画書を持参すれば、書店員にとって採用しやすい提案になる。これが書店営業の差別化軸だ。
戦術2:取次・書店本部交渉のためのデータ分析をAIで武装する
取次・書店本部は数字で動く
書店店舗との関係は人間関係だが、取次(日販・トーハン等)の担当者や書店チェーン本部のバイヤーは、徹底的に数字で動く。
- 過去類書の販売実績
- 著者の前作売上推移
- メディア露出計画と過去の連動データ
- 在庫リスクとなる返品率予測
- 競合出版社の同ジャンル動向
- 電子書籍との連動売上
これらを新刊1点ごとに、毎月十数点〜数十点の新刊に対して人力で分析するのは現実的でない。
AI活用:新刊事前注文獲得のためのデータブリーフ
あなたは出版社の取次・書店本部向け営業コンサルタントです。
以下の新刊について、取次・書店本部交渉用のデータブリーフを作成してください。
【新刊情報】
- 書名:●●
- 著者:●●(前作実績、SNSフォロワー数、メディア露出歴)
- ジャンル:●●
- 定価:●●円
- 初版予定部数:●●部
【自社の出版実績】
- 同ジャンル過去5年の販売実績
- 類書(自社・他社)の販売推移
【市場データ】
- 同ジャンル市場全体のトレンド
- 競合出版社の同時期類書
- 季節要因、メディア連動予定
【出力フォーマット】
1. この新刊の販売予測(楽観/標準/悲観の3シナリオ)
2. 配本数の根拠提示(取次向け)
3. 返品率予測と対策
4. 書店チェーン本部向けの差別化ポイント
5. 同時期に出る競合書との比較表
6. メディア露出スケジュールと連動配本提案
7. 想定される質問と回答準備
ここまで準備すれば、取次・書店本部担当者から「この出版社の営業は数字を持ってくる」と認識される。これは経験10年のベテラン営業と新人の差を一気に縮める武器になる。
重要:書店本部MDとの長期関係構築
書店チェーン本部のMD(マーチャンダイザー)との関係は、出版社にとって最重要だ。全店一括展開可能性が新刊の運命を左右するためだ。MDが動く判断軸をAIで構造化する。
●●書店チェーン本部のMD(●●ジャンル担当)との関係構築計画を作成してください。
【入力情報】
- MDの過去の発言・SNS・寄稿・登壇履歴
- このチェーンの直近1年のフェア・イベント実績
- 競合チェーンとの差別化軸
- このMDが採用した話題書のパターン
【出力】
1. MDが大切にしている価値観TOP3(推定)
2. このMDが採用しやすい企画の傾向
3. このMDが嫌う提案の傾向
4. 信頼を勝ち取るための情報共有戦略
5. 半年〜1年単位の関係構築ロードマップ
書店本部のMDレベルの関係は、出版社の中長期戦略を左右する。AIで関係構築の質を高めることは、組織にとって極めて高ROIな投資だ。
戦術3:書店活性化と物流2024年問題、構造変革期を武器に変える
業界全体が構造変革期にある
業界の重要インサイトを共有する。2024〜2026年は、出版業界にとって構造変革期である。
- 経産省の書店振興プロジェクトチーム発足、書店活性化策の検討
- 講談社・読売新聞による書店活性化提言など、出版社側の支援表明
- ブックセラーズ&カンパニーによる書店主導改革——紀伊國屋・CCC・日販の連携、出版社との直接取引交渉
- 物流2024年問題: トラック労働時間規制、配本困難、書籍配送コストの根本的見直し
- 取次のビジネスモデル変革: 雑誌依存モデルの限界、共同配送網の維持困難
- 再販制度・委託制度の再検討: 業界全体での流通改革議論
- 電子書籍の継続成長: 紙との両軸戦略の必要性、特に電子コミックの伸長
これらを書店店長・書店本部MD・取次担当者が独力で全部追うのは、現実的に不可能だ。日々の業務で時間が取れない。
ここに、外部の出版社営業が圧倒的に価値を発揮できる余地がある。自社新刊のDMではなく、業界構造変化と書店活性化情報のキュレーションを持っていく営業は、確実に扉が開く。
AI活用:書店向け月次業界情報レターを自動生成
あなたは出版業界の構造分析コンサルタントです。
書店店長・書店本部MD向けに、月1回配布するお役立ち情報レターを作成してください。
【今月のテーマ候補】
1. 書店活性化プロジェクト最新動向:補助金・支援策の活用
2. 物流2024年問題対応:他書店の配本見直し事例
3. 書籍+α業態転換の他店事例:文具・カフェ・イベントの収益化
4. 選書型書店・独立系書店の成功事例
5. 電子書籍と紙のクロスマーケティング事例
6. SNS時代の書店プロモーション:書店員POP・TikTok・X
7. 学校・図書館・地域コミュニティとの連携事例
【条件】
- A4 2枚(2,000字程度)
- 書店経営者がそのまま意思決定の参考にできる粒度
- 自社書籍の売り込み色を抑え、情報価値を最優先
- 末尾に、フェア企画・販促相談はお気軽に、と当社連絡先
- 出典URL(経産省、出版科学研究所、業界紙)を明記
【自社の強み】
- 取扱ジャンル:●●
- 過去のフェア成功事例:●●件
- 業界での実績:●●
このレターを毎月、担当エリアの書店店長・MD50〜100名に郵送する。半年続ければ、●●社さんは業界全体の話を持ってきてくれるという認識が確立される。これは新刊割引では作れない関係性だ。
さらに踏み込む:書店タイプ別カスタマイズ
書店業界はタイプによって関心が全く違う。大手チェーン本部、地域独立系、駅前小規模、専門書系では、関心領域も経営課題も全く違う。
以下の書店タイプに合わせて、月次レターをカスタマイズしてください。
【入力データ】
- 書店タイプ:(大手チェーン本部 / チェーン店舗 / 地域独立系 / 駅前小規模 / 専門書系)
- 立地:(都市部 / 地方 / 駅前 / 商業施設内 / 路面店)
- 主力ジャンル:●●
【出力】
1. その書店タイプに最適な情報トピック
2. 関連する業界動向
3. 同タイプ書店の他店事例(公開情報のみ)
4. 自社書籍の関連提案
書店タイプ別に個別化されたレターは、東京から一律で送られてきた営業資料ではなく、自分の書店を理解した情報源として認識される。
戦術4:訪問記録と書店別カルテをAIで蓄積する
書店との関係は20年単位の超長期
出版社・書店営業の特殊性は、一度信頼関係を築くと、書店員・MDの在任中(多くは10〜20年)の長期取引になることだ。逆に言えば、初期の関係構築に失敗すると、その書店員が異動するまで取引機会は来ない。
ここで重要なのが、書店1軒ごと、書店員1人ごとの個別情報をどう蓄積していくかだ。
- 書店員・MDの個性、選書眼、推しジャンル
- 書店の客層、棚構成、季節変動
- 過去のフェア実績、好評だった企画
- 競合出版社の出入り状況
- 取次経由の配本実績、追加注文パターン
- メディア露出と店頭反応の連動
- 書店員のSNS発信・登壇歴
これらを記憶と紙の手帳で管理してきたベテランが多いが、退職時に消滅する。組織知化が業界全体の課題だ。
AI活用①:訪問音声メモから書店別カルテを自動生成
以下は書店訪問直後の音声メモです。
これを書店別カルテと次回訪問準備シートに整理してください。
【出力フォーマット1:書店別カルテ】
- 訪問日時 / 書店名 / 対応者(店長/書店員/MD)
- 書店の状況変化(客層、売場改装、人員)
- 進行中の関心事(フェア企画、改装計画、新刊検討)
- 自社書籍の店頭状況(平台 / 棚差し / 在庫切れ)
- 競合出版社の動向
- 業界動向への反応(物流2024年問題、書店活性化等)
- 関係性ステージ(初訪 / 情報提供 / 商談 / 取引 / 長期パートナー)
【出力フォーマット2:次回訪問準備シート】
- 訪問のベストタイミング(新刊発売日、フェア準備期、棚替え時期等)
- 持参すべき情報・新刊サンプル・POP・販促物
- 想定される会話の流れ
- 関連する業界動向情報
【音声メモ】
「●●書店●●店の佐藤店長と話してきた。今月の客足は前月比10%減、特に雑誌売場が苦しい。来月から雑誌棚を縮小して、文芸・新書を拡大する改装を検討中。当社の●●(自社書籍)は平台で売れ行き好調、追加発注したいとのこと。SNSで話題の●●(他社書籍)が品薄で、客から問い合わせが多い。書店員の田中さんが推理小説好きで、独自フェアをやりたい意向。」
5分かかっていた記録作業が、音声30秒・AI処理10秒・人間レビュー2分で完了する。日々10書店訪問する営業なら、月20時間の業務時間が浮く。
AI活用②:エリア全体の動向を月次で集約
以下は今月の書店訪問記録30件のサマリーです。
これを分析し、来月のエリア戦略を作成してください。
【分析してほしいこと】
1. 担当エリアで今月最も多く出ている経営課題TOP3
2. 自社書籍の店頭反応が良い書店リスト
3. 改装・業態転換を検討している書店リスト
4. 競合出版社の動きで気になる点
5. 業界動向関連の質問が多かったテーマ
6. 来月の重点訪問先(戦略的優先度付き)
【出力】
- エリア動向レポート(A4 1枚)
- 編集部・宣伝部・販売部への現場フィードバック
- 来月の訪問計画ドラフト
- 重点新刊の配本戦略
これができる営業は、個別書店との関係だけでなく、エリア全体を俯瞰できる戦略家として組織内で評価される。
戦術5:出版業界変革期の自分のキャリア戦略をAIで設計する
業界の構造変化は、営業担当者にも生存戦略を要求する
ここまでの4戦術は現場業務をどう変えるかだった。だが出版社・書店営業は、業界全体の構造変化、すなわち紙市場4割減、書店半減、雑誌依存モデル崩壊、物流2024年問題の中で、営業担当者自身のキャリア戦略も問われる時代になっている。
具体的な業界変化:
- 紙の出版市場の継続縮小: 営業対象である書店そのものが減り続ける
- 電子出版の成長と独自エコシステム: Amazon Kindle、楽天Kobo、ピッコマ、LINEマンガなどのデジタル流通
- 直接販売の拡大: 出版社が書店・取次を介さずECで販売するD2C化
- メディアミックス・IP戦略の重要性: 書籍売上だけでなく映像化・グッズ化・海外展開
- 取次の再編: ビジネスモデル変革、書店との関係見直し
- 新形態書店の台頭: 選書型独立系書店、書籍+α業態、シェア型書店
つまり、従来の書店ルート営業だけでは生き残れない。生き残る営業の条件は、紙・電子・IP・直接販売すべてを俯瞰できる「出版・コンテンツ業界の専門家」になることだ。
AI活用:自分自身のキャリア戦略をAIに分析させる
あなたは出版・コンテンツ業界向け営業のキャリアコンサルタントです。
以下の私の経歴をもとに、今後5年のキャリア戦略を提案してください。
【経歴】
- 現職:●●(出版社の書店営業/取次営業/広告営業/電子出版営業など)、入社●年目
- 担当エリア/担当書店:●●
- 強み:●●
- 弱み:●●
【業界状況】
- 紙市場4割減、書店20年で半減、書店ゼロ自治体26.2%
- 電子市場の成長、特に電子コミック5,000億円突破
- 出版社D2C化、取次の再編
- メディアミックス・IP戦略の重要性
- 新形態書店の台頭
【出力】
1. 現職で生き残るための専門性強化プラン
2. 取得すべき資格・知識(出版経営、デジタルマーケ、IP管理、データ分析など)
3. 業界内転換の選択肢(編集職、宣伝、ライセンス事業、電子書籍ストア営業、出版コンサル等)
4. 業界外への転用可能性(Webメディア、コンテンツマーケ、エンタメ業界、教育出版等)
5. 5年後の市場価値を最大化するアクションプラン(年次別)
これは戦術1〜4とは性質の違う、自分自身の生存戦略のためのAI活用だ。出版業界の構造変化は、営業担当者個人のキャリアにも確実に影響する。
ROIで考える:出版社・書店営業がAIを使う価値
AIツールに月数千円払う価値はあるのかという疑問が当然出てくる。試算してみる。
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 訪問前リサーチ | 1店30分 | 1店5分 | 月50店で20時間節約 |
| 書店別フェア企画書 | 1企画3時間 | 1企画30分 | 月10企画で25時間節約 |
| 取次・本部交渉ブリーフ | 1新刊2時間 | 1新刊20分 | 月20新刊で30時間節約 |
| 月次業界情報レター | 作成不可(時間がない) | 月1回・100店配布 | 半年後の信頼関係+5店 |
| 訪問記録・書店カルテ | 1日60分 | 1日15分 | 月15時間節約 |
| 商談温度感 | カタログ置きで受け身 | 個別企画で能動的 | 棚位置採用率2倍以上 |
仮にChatGPT有料版(月額3,000円程度)を導入し、月5店で平台採用が増えただけで、追加販売部数×印税ベースの利益で、ROIは数百〜数千倍になる。
そして何より、出版社・書店営業は書店員・MDとの信頼関係が長期にわたって雪だるま式に成果を生む業界である。一度「この営業の提案は採用したい」という関係を作れば、新刊1点1点の交渉コストが劇的に下がる。AIで関係構築の質を高めることは、長期にわたって複利で効く投資だ。
立場別の第一歩
立場別に、取り組むべき優先戦術を整理する。
| 立場 | 最優先で取り組むべき戦術 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 新人営業・〜3年目 | 戦術1(書店マップ)+戦術4(訪問記録自動化) | ベテランに追いつくスピードを劇的に上げる |
| 中堅営業・4〜10年目 | 戦術2(取次・本部交渉データ)+戦術3(業界レター) | カタログ置きから提案者への転換 |
| ベテラン営業・11年〜 | 戦術4の組織知化+戦術5(キャリア戦略) | 暗黙知を組織資産に転換、後継者育成 |
| 営業部長・販売部長 | 全戦術のフレームワーク化 | 出版業界変革期への組織転換 |
| 編集者・宣伝担当 | 戦術4のフィードバック活用+戦術1の書店マップ共有 | 現場の声を編集・宣伝戦略に直結 |
出版社・書店営業に必要な、これからの思考
最後に、出版社・書店営業が持つべき視点を整理する。
新刊カタログ置きを否定しない。だが新刊カタログだけを置き続ける営業は、5年以内に淘汰される。紙市場はピーク比4割減、書店は20年で半減、雑誌依存モデルは崩壊、物流2024年問題で配本そのものが困難になっている。書店員・MDが本当に求めているのは、もう1冊の新刊紹介ではない。書店の存続を一緒に考えるパートナーだ。AIを使える営業は、同じ訪問数でも、書店員の中に残る印象が圧倒的に違う。1年後、その差は棚位置採用率と紹介経由案件数となって明確に表れる。3年後、その差はキャリアそのものを変える。
出版業界は、外から見れば縮小する業界に見える。だが業界の中で起きているのは縮小ではなく、再編と再定義だ。閉店する書店もあれば、選書型・地域密着型で生き残る書店もある。紙だけに依存する出版社もあれば、IP・電子・海外で成長する出版社もある。生き残る側のパートナーになれるかどうかは、書店個別理解と業界構造理解、両方を持てるかで決まる。
最初に書店活性化のパートナーポジションを取った営業が、エリア内の主要書店との長期取引を独占するポテンシャルがある。


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