「うちは油外まで手が回らないから、また今度な」
——ガソリンスタンドの事務室で、こう返された経験は、油外商材・整備機器・洗浄剤を売る営業なら数え切れないほどあるはずだ。
ガソリンスタンド・整備工場向け営業の現実は、世間が想像するよりはるかに地殻変動の真っただ中にある。資源エネルギー庁によれば、ガソリンスタンド数は1994年の60,421カ所から2024年3月末の27,414カ所へ、30年で半減以下となった。揮発油販売業者数は平成元年の32,835社から令和4年の12,754社へ、3分の1近くに激減している。
そして決定打が、業界の構造的な地殻変動だ。
- 2024年のガソリンスタンド倒産・休廃業は184件、コロナ禍前の水準に迫り、3年連続で増加(帝国データバンク)
- SS過疎地は372市町村——これは2024年時点でガソリンスタンドが3カ所以下となった市町村の数だ
- ガソリンスタンド経営者の97%が中小企業、特約店・販売店が大半で、店主の高齢化と後継者不在が深刻
- 2024年新車販売の6割以上がHV、整備技術の高度化が継続的に要求される
- EV普及加速: 充電インフラは2024年末で85,402台、政府は2030年までに30万口を目標
- 元売り3社の戦略転換: 出光は「アポロステーション」ブランドへ統合、EVシェアリング・コワーキング・水素ステーション併設など多角化
- 将来予測: 2030年に給油所数は約2万カ所、2040年には13,000カ所を下回る見通し(桃山学院大学・小嶌正稔教授)
そんな中、SS・整備工場向け営業の現場はかつてのままだ。担当先30〜50店舗のルート訪問、新油外商材のサンプル提示、店長との立ち話、洗剤・コーティング剤・タイヤ・バッテリー・整備工具・診断機の提案——10年前と本質的には同じ業務だ。
ところが、顧客であるSS・整備工場は急速に変わっている。給油だけでは生き残れない、油外収益への切り替えが急務、整備士不足、EV対応投資、後継者不在。従来の御用聞き型営業のままでは、顧客と一緒に沈むしかない構造になってきている。
結論から言う。ガソリンスタンド・整備工場向け営業こそ、生成AIで景色が変わる仕事である。
理由は3つある。
①SS・整備工場の経営課題(油外収益化、整備士不足、EV対応、後継者問題、廃業判断)を構造化し、それに応える提案資料をAIで量産できる
②店舗ごとの油外実績、車種構成、地域特性の分析をAIで圧縮できる
③元売り・特約店・販売店の階層構造と、ENEOS・出光・コスモなどのブランドごとの方針差をAIで体系的に整理できる
——この3条件が揃う仕事は、AIとの相性が極めて良い。
本記事では、SS・整備工場・カーディーラー向け営業の現場で明日から使える生成AI活用術を、5つの戦術として提示する。読み終えたとき、サンプル置きで終わる訪問から、店長の経営課題を一緒に解く伴走者へ切り替える地図が手に入っているはずだ。
SS・整備工場営業の現実:顧客が沈みつつある中で何を提案するか
顧客の経営構造を理解する
まず前提を整理する。SS・整備工場向け営業の難しさは、顧客が業界全体で経営危機にあること、そして店舗のタイプによって意思決定構造が全く違うことだ。
| 顧客タイプ | 経営状況 | 響くもの | 響かないもの |
|---|---|---|---|
| 元売り直営SS・ENEOS/出光/コスモ系 | 元売り本部の方針に従属、店舗裁量小 | 本部承認済み商材、全社展開実績 | 店舗単独の判断を要する提案 |
| 大型特約店・販売店 | 経営は比較的安定、複数店舗展開 | 油外収益化、データ活用、本部連携 | 単店個別の小ロット提案 |
| 中小特約店・販売店 | 後継者問題、設備老朽化、廃業検討 | 投資回収の早い商材、地下タンク対応、補助金情報 | 大規模設備投資、長期契約 |
| 整備工場(モータース・指定工場・認証工場) | 整備士不足、EV/HV対応投資 | 故障診断機、HV対応工具、整備士教育コンテンツ | 給油関連商材 |
| カーディーラー系サービス工場 | メーカー直系で安定、ただし台数減 | アフターサービス商材、CS向上ツール | 整備の根幹を覆す提案 |
つまり、1人の営業担当者が、5種類の全く違う経営状況の顧客を同時に回しているような状況だ。同じ洗浄剤・コーティング剤・整備工具を売るにしても、刺さる言葉も提案の組み立ても全く違う。
元売り・特約店・販売店という独自の階層構造
SS業界の最大の特殊性は、元売り・特約店・販売店という3層構造だ。これを理解しないと提案そのものが空回りする。
- 元売り: ENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスなどの石油元売り会社、ブランドオーナー
- 特約店: 元売りから直接仕入れて販売する企業、複数の販売店を持つことも
- 販売店または代理店: 特約店から仕入れて販売する事業者、規模はさらに小さい
外部営業から見ると同じENEOSの看板でも、経営主体は全く違う。元売り直営店なら本部承認が必要、特約店なら社長の判断、販売店なら店主の判断で動く。これを混同して提案すると、決裁ラインを完全に間違える。
営業現場の独自構造
SS・整備工場向け営業には、他業界と比較しても特殊な構造がある。
- 油外収益化が業界全体の最大テーマ: ガソリン販売だけでは生き残れないため、洗車・オイル交換・コーティング・車検・タイヤ・カーリース・自動車保険などの油外商材への切り替えが至上命題
- 整備工場の二極化: 「自動車特定整備認証」を持つ工場とそうでない工場の差が拡大。EV/HV高電圧整備の認証取得が経営を左右
- 24時間営業の店舗が多い: 訪問可能時間は朝のシフト交代時か午後の閑散時間
- 車種構成データを店舗が持っている: 顧客車両の年式・車種データが油外提案の最大の武器
- 季節性が極めて強い: 冬タイヤ・夏タイヤ、夏のクーラント、冬の凍結防止剤、車検サイクルなど
- 元売りの全社施策との連動: ENEOSのアポロステーション統合のような大きな施策があると、現場の優先順位が一変する
SS・整備工場の経営は確実に厳しい方向に動いている。同じ商材を10年前と同じ売り方で出しても、利益は確実に削られていく。営業が生き残るには、店長・社長の経営を一緒に考える役割への進化が必要だ。
そして、SS・整備工場経営の課題理解と個別提案は、生成AIで武装すれば中小ベンダーレベルでも実装できる。これが本記事の出発点だ。
戦術1:担当エリアの店舗構造をAIで構造化する
よくある失敗:取引履歴と店舗名だけで顧客を見る
ベテラン営業ほど、担当先の店舗を店舗名と取引履歴で把握している。だが店舗名だけでは見えない情報こそ、これからの営業に決定的に重要だ。
- 元売り直営/特約店/販売店のどれか
- 元売り(ENEOS、出光、コスモ、その他)
- フルサービス/セルフサービス
- 油外商材の比率(油外売上÷総売上)
- 整備認証の種別(指定工場、認証工場、特定整備認証)
- 後継者の有無、店長・社長の年齢
- 地下タンクの設置年数(40年耐用、SS過疎地対策の対象か)
- HV/EV対応の整備設備の有無
これらを担当先30社分、人力で常時アップデートするのは現実的でない。
AI活用:担当エリア店舗マップを構造化する
あなたはSS・整備工場向け油外商材の営業コンサルタントです。
担当エリアの店舗リスト30件について、以下の軸で分類してください。
【入力情報】
- 顧客台帳(店舗名、取引履歴、過去3年の油外売上推移、主要担当者)
- 公開情報(資源エネルギー庁の給油所データ、エネオス/出光/コスモのHP、口コミ、求人情報)
【分類してほしい軸】
- 元売り構造:元売り直営 / 特約店 / 販売店
- ブランド:ENEOS / 出光(アポロステーション) / コスモ / キグナス / 太陽石油 / その他
- 形態:フルサービス / セルフ / 兼業
- 油外比率:高(30%以上)/ 中(10〜30%)/ 低(10%未満)の推定
- 整備認証:指定工場 / 認証工場 / 特定整備認証保有 / なし
- 後継者の有無の推定
- 地下タンク設置年数(経年から廃業リスクを推定)
- EV/HV対応設備の有無
【各店舗について出してほしい内容】
- 直近の経営課題TOP3(推定、根拠付き)
- 自社商材との適合度(A/B/C)
- 推奨訪問頻度
- 響くトークの方向性
- NGトーク
【出力フォーマット】
- 30店舗の構造マップ
- 攻略優先度マトリクス
- 各店舗の典型的な訪問シナリオ
- 月次訪問計画のドラフト
これだけで、御用聞き訪問の連続から、戦略的な訪問計画へ変わる。担当エリアを俯瞰できる営業は、所長会議でも本社からも一気に評価が上がる。
一歩進んだ使い方:地域の車種構成データから機会を抽出
●●地域(●●市●●区)について、以下の分析をしてください。
【入力情報】
- 軽自動車保有率、HV/EV普及率
- 地域の年齢構成、世帯収入帯
- 地域の主要道路、交通量、競合SSの密度
- 地域の整備工場・カーディーラー分布
【出力】
1. この地域で油外で攻めるべき商材TOP3(コーティング、タイヤ、車検、保険など)
2. この地域で減少している商材
3. HV/EV車両比率から見る今後3年の整備需要シフト
4. 競合(他の油外商材ベンダー、用品店)の動向
5. 地域固有の課題(積雪、塩害、湿度、走行距離特性)
6. 営業として持つべき地域の文脈キーワード20個
ここまでやれば、商品を売る営業から、地域の自動車市場を語れる営業へ変わる。SS店長との会話で、地域の車種構成を踏まえた話ができれば、信頼度は劇的に上がる。
戦術2:油外収益化を伴走する提案書を量産する
油外収益化はSS業界の至上命題
SS業界では、ガソリン販売だけでは生き残れないという認識は完全に共有されている。油外収益、すなわち洗車・オイル交換・コーティング・タイヤ・車検・カーリース・保険・整備の比率を高めることが、すべての店舗の至上命題だ。
しかし、油外収益化は言うほど簡単ではない。
- スタッフの油外提案スキルにバラつきがある
- 給油客への声かけのタイミングが難しい
- 油外商材の在庫リスク・賞味期限
- 来店客の車種・年式に応じた最適提案の難しさ
- 競合(用品店、カーディーラー、整備専門店)との価格競争
ここで決定的な差別化機会がある。油外商材を売るだけでなく、店舗の油外収益化そのものを伴走する提案を持ち込めるかだ。具体的には:
- 来店客車種データに基づく最適油外商材の提案
- スタッフ向け油外提案トークスクリプト
- 季節別の油外推奨計画(冬タイヤ、夏前のクーラント、車検前のコーティング等)
- 競合と差別化する油外パッケージング
- 油外売上の店舗別ベンチマーク
これを商談ごとに準備するのは人力では困難だが、AIなら15分で準備できる。
AI活用:店舗別の油外収益化提案書を自動生成
以下のSS店舗について、油外収益化提案書を作成してください。
【店舗情報】
- 店舗名:●●(ENEOS特約店、フルサービス、月間給油量●kL)
- 油外売上比率:●%(推定)
- 来店客車種構成:軽●%、コンパクト●%、セダン●%、SUV●%、HV●%、EV●%
- 直近の悩み:油外スタッフのスキルばらつき、夜間客の油外提案困難
【自社の取扱商材】
- カテゴリ:(洗浄剤、コーティング剤、添加剤、タイヤ、バッテリー、整備工具、診断機など)
- 主力商品:●●
- 競合品との差別化:●●
【出力フォーマット】
1. この店舗で最も上げ余地のある油外商材TOP3(具体的な売上見込み付き)
2. スタッフ別の役割分担提案(誰がどの油外を提案するか)
3. 来店客タイプ別の油外提案シナリオ
4. 季節別の油外計画(向こう12カ月)
5. 競合との差別化ストーリー
6. 投資回収シミュレーション(自社商材導入の費用対効果)
7. 次回訪問のフックになる宿題
これができれば、油外サンプル置きの営業ではなく、店舗の油外収益化パートナーとして認識される。これがSS・整備工場向け営業の差別化軸だ。
重要:店舗現場で見える情報を活用する
SS・整備工場向け営業の独自の武器は、店舗に行けることだ。事務所のデスクワークではなく、給油や整備の現場で起きていることを直接見られる。これをAIで構造化すれば、本部マーケや商品企画に渡せる強力なフィードバックになる。
以下は店舗訪問時のスタッフ・店長から聞いた声のメモです。
これを「現場の課題リスト」と「商材改善提案」に整理してください。
【出力フォーマット1:現場の課題リスト】
- 商材名 / 課題の種別 / 具体的な不満 / 頻度
- 競合商材との比較
- スタッフが望む改善点
【出力フォーマット2:商材改善提案】
- 本部マーケ・商品企画への提案事項
- 関連する他商材の販売機会
- 営業として現場で取れる対応策
【音声メモ】
「●●SSの田中店長と話してきた。コーティング剤の●●(自社商材)は効果はいいけど、施工に20分かかるから、ピーク時間帯の客には提案できないって。競合の●●は10分で施工できるから、客の待ち時間の関係でそっち選ばれることが多いとのこと。あと、スタッフの女性が増えてきたから、重い洗浄剤ボトルが嫌がられている。1Lの小分けボトルがあれば即決定するって話。HVのバッテリー診断の問い合わせが増えてるけど、現状の診断機では対応できないと困っていた。」
これができる営業は、油外メーカーの中で現場の声を組織にフィードバックできる存在として一目置かれる。
戦術3:EV化・整備士不足・SS過疎地対策を武器に変える
SS・整備工場経営者は構造変化の波に追われている
業界の重要インサイトを共有する。2024〜2026年は、SS・整備工場経営者にとって構造変化の連続である。
- 2024年問題=物流業界の労働時間規制: 運送会社の車両稼働パターンが変化、整備需要にも波及
- EV普及加速: 充電インフラ85,402台に到達(2024年末)、政府目標2030年30万口
- HV車両の整備技術高度化: 2024年新車販売の6割以上がHV、高電圧整備の認証取得が必須化
- SS過疎地対策: 372市町村が対象、自治体補助金、公設民営、移動式SS等の対応策
- 地下タンク改修・更新義務: 設置40年で耐用年数到来、廃業判断の分岐点
- 自動車整備士不足: 整備学校の入学者減、業界平均年齢の上昇
- 元売りブランド統合: 出光のアポロステーション化、ENEOSのDX戦略
これらをSS店主・整備工場経営者が独力で全部追うのは、現実的に不可能だ。日々の店舗運営・スタッフ管理・顧客対応で時間が取れない。
ここに、外部の営業担当者が圧倒的に価値を発揮できる余地がある。自社商材のDMではなく、業界構造変化と対応策のキュレーションを持っていく営業は、確実に扉が開く。
AI活用:SS・整備工場経営者向け月次情報レターを自動生成
あなたは自動車・燃料業界の制度コンサルタントです。
SS店主・整備工場経営者向けに、月1回配布するお役立ち情報レターを作成してください。
【今月のテーマ候補】
1. SS過疎地対策の最新動向:自治体補助金・公設民営の事例
2. 地下タンク改修・更新の費用と補助金活用
3. EV充電器設置の費用対効果と元売り各社の支援策
4. HV/EV特定整備認証の取得手続きと整備士養成プログラム
5. 油外収益化の他店事例:油外比率30%超を達成した小規模SSの工夫
6. 元売り各社の戦略アップデート(ENEOS、出光アポロステーション、コスモ)
7. 車両電動化シフトに対応する整備工場の事業多角化
【条件】
- A4 2枚(2,000字程度)
- SS店主・整備工場経営者がそのまま意思決定の参考にできる粒度
- 自社商材の売り込み色を抑え、情報価値を最優先
- 末尾に、補助金活用・経営相談はお気軽に、と当社連絡先
- 出典URL(資源エネルギー庁、経済産業省、自治体公式、業界紙)を明記
- 申請期限や問い合わせ先などの実務情報を必ず含める
【自社の強み】
- 取扱商材:●●
- 過去の経営支援実績:●●件
- 業界での実績:●●
このレターを毎月、担当エリアのSS店主・整備工場経営者50〜100名に郵送する。半年続ければ、●●社さんは業界動向の話を持ってきてくれるという認識が確立される。これは値引きでは作れない関係性だ。
さらに踏み込む:地域別カスタマイズ
SS・整備工場業界は地域性が極めて強い。寒冷地、温暖地、都市部、SS過疎地では、油外商材の動きも経営課題も全く違う。
以下の地域条件に合わせて、月次レターをカスタマイズしてください。
【入力データ】
- 地域:(例:北海道、東北、関東、関西、九州、沖縄、SS過疎地など)
- 気候特性:(積雪、塩害、湿度、台風頻度)
- 地域の主要店舗タイプ:(フルサービス中心、セルフ中心、整備工場兼業など)
【出力】
1. その地域・気候に最適な情報トピック
2. 関連する地域独自の補助金・助成制度
3. 地域内の他店事例(公開情報のみ)
4. 自社商材の関連提案
地域別に個別化されたレターは、東京から一律で送られてきた営業資料ではなく、自分たちの地域を理解した情報源として認識される。
戦術4:訪問記録と店舗別カルテをAIで蓄積する
店舗との関係は世代を超える超長期取引
SS・整備工場向け営業の特殊性は、一度信頼関係を築くと、店主の代から息子の代に引き継がれる20〜30年単位の取引になることだ。逆に言えば、初期の関係構築に失敗すると、その店舗とは長期にわたって取引機会が来なくなる。
ここで重要なのが、店舗1軒ごとの個別情報をどう蓄積していくかだ。
- 店主・社長の人柄、経営理念、こだわり
- 油外商材の好み、過去の導入実績
- 元売りとの関係性、特約店本部との関係
- スタッフの体制、提案スキルの偏り
- 来店客層、車種構成の経年変化
- 競合の出入り状況
- 後継者の状況、世代交代の時期
これらを記憶と紙の手帳で管理してきたベテランが多いが、退職時に消滅する。組織知化が業界全体の課題だ。
AI活用①:訪問音声メモから店舗別カルテを自動生成
以下はSS・整備工場訪問直後の音声メモです。
これを店舗別カルテと次回訪問準備シートに整理してください。
【出力フォーマット1:店舗別カルテ】
- 訪問日時 / 店舗名 / 対応者
- 経営状況の変化(給油量、油外売上、人員、後継者)
- 油外商材の状況(採用商材、検討中商材)
- 困りごとTOP3(具体的に)
- 競合動向(他社の動き)
- 構造変化対応状況(EV、整備認証、地下タンク、後継者)
- 自社商材への反応(5段階)
- 関係性ステージ(初訪 / 情報提供 / 商談 / 取引 / 長期パートナー)
【出力フォーマット2:次回訪問準備シート】
- 訪問のベストタイミング(給油ピーク回避、シフト交代時等)
- 持参すべき情報・カタログ・サンプル
- 想定される会話の流れ
- 関連する補助金・業界動向情報
【音声メモ】
「●●SSの佐藤店長と話してきた。今月給油量は前年比5%減、油外は逆に10%増で、コーティングが伸びてる。スタッフの女性比率が40%まで上がってきて、重い商材の扱いに苦労している。地下タンク設置から35年経つから、5年以内に更新するか廃業するかの判断を迫られそうとのこと。隣町に新しいセルフSSができて、価格競争が厳しい。●●(競合)が先週来て新商品の説明していった。社長の息子さんが大学卒業して入社予定。」
5分かかっていた記録作業が、音声30秒・AI処理10秒・人間レビュー2分で完了する。日々10店舗訪問する営業なら、月20時間の業務時間が浮く。
AI活用②:エリア全体の動向を月次で集約
以下は今月のSS・整備工場訪問記録30件のサマリーです。
これを分析し、来月のエリア戦略を作成してください。
【分析してほしいこと】
1. 担当エリアで今月最も多く出ている経営課題TOP3
2. 油外売上が伸びている店舗リスト
3. 廃業リスクが高まっている店舗リスト
4. EV/HV対応で困っている整備工場リスト
5. 競合の動きで気になる点
6. 業界構造変化関連の質問が多かったテーマ
7. 来月の重点訪問先(戦略的優先度付き)
【出力】
- エリア動向レポート(A4 1枚)
- 本社報告用の数値サマリー
- 来月の訪問計画ドラフト
- メーカー・本部への現場フィードバック
これができる営業は、個別店舗との関係だけでなく、エリア全体を俯瞰できる戦略家として組織内で評価される。
戦術5:エネルギー転換期の自分の生存戦略をAIで設計する
業界の構造変化は、営業担当者にも生存戦略を要求する
ここまでの4戦術は現場業務をどう変えるかだった。だが SS・整備工場向け営業は、業界全体の構造変化、すなわちガソリンスタンド30年で半減、EV普及加速、2040年に13,000カ所予測の中で、営業担当者自身のキャリア戦略も問われる時代になっている。
具体的な業界変化:
- ガソリンスタンドの絶対数減少: 営業対象そのものが縮小
- 元売り各社の戦略転換: ENEOSのDX、出光のアポロステーション統合、コスモのリブランディング
- EV充電・水素・カーリース・カーシェアなど、エネルギー転換ビジネスの台頭
- 整備業界の専門化: 特定整備認証、HV/EV高電圧整備の専門化
- 油外比率の上限: いくら油外を伸ばしても給油客自体が減れば限界
- 新規参入者: 大型カー用品店、カーディーラー、ホームセンターの油外進出
つまり、従来のSS向け油外商材を売る営業だけでは、長期的に生き残れない。生き残る営業の条件は、自動車・エネルギー業界全体の構造を語れる「モビリティ業界の専門家」になることだ。
AI活用:自分自身のキャリア戦略をAIに分析させる
あなたは自動車・燃料業界向け営業のキャリアコンサルタントです。
以下の私の経歴をもとに、今後5年のキャリア戦略を提案してください。
【経歴】
- 現職:●●(油外商材メーカー/整備機器メーカー/燃料商社/カー用品商社など)、入社●年目
- 担当エリア:●●
- 担当顧客:SS●店、整備工場●社、カーディーラー●社
- 強み:●●
- 弱み:●●
【業界状況】
- ガソリンスタンド数は30年で半減、2040年に1万3000カ所予測
- 2024年新車販売6割以上がHV、EV普及加速
- 元売り各社のブランド統合・DX戦略
- 整備業界のHV/EV高電圧専門化
- 自動車整備士不足
【出力】
1. 現職で生き残るための専門性強化プラン
2. 取得すべき資格・知識(自動車整備士、危険物取扱者、自動車検査員、EV関連資格など)
3. 業界内転換の選択肢(EV充電インフラ営業、カーシェア・サブスク事業、整備SaaS、カーディーラー営業など)
4. 業界外への転用可能性(モビリティスタートアップ、エネルギー業界、運輸業界など)
5. 5年後の市場価値を最大化するアクションプラン(年次別)
これは戦術1〜4とは性質の違う、自分自身の生存戦略のためのAI活用だ。自動車・エネルギー業界の構造変化は、営業担当者個人のキャリアにも確実に影響する。
ROIで考える:SS・整備工場向け営業がAIを使う価値
AIツールに月数千円払う価値はあるのかという疑問が当然出てくる。試算してみる。
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 訪問前リサーチ | 1店舗30分 | 1店舗5分 | 月50店舗で20時間節約 |
| 油外収益化提案書 | 1案件3時間 | 1案件30分 | 月10店舗で25時間節約 |
| 月次業界情報レター | 作成不可(時間がない) | 月1回・100店舗配布 | 半年後の新規アポ+5件 |
| 訪問記録・店舗カルテ | 1日60分 | 1日15分 | 月15時間節約 |
| 商談温度感 | サンプル置きで受け身 | 経営伴走で能動的 | 成約率2倍以上 |
| 大型案件の獲得 | 油外商材単発提案 | 油外収益化全体提案で受注 | 1店舗あたりLTV倍増 |
仮にChatGPT有料版(月額3,000円程度)を導入し、月3店舗の油外取引拡大が生まれただけで、油外商材の継続取引(月数万〜数十万円)×契約継続期間(5〜10年)で、ROIは数百〜数千倍になる。
そして何より、SS・整備工場向け営業は契約後の継続率が極めて高い業界である。一度信頼関係を築けば、店主の代から息子の代まで、20年30年単位で取引が続く。AIで関係構築の質を高めることは、長期にわたって雪だるま式に売上を増やす投資になる。
立場別の第一歩
立場別に、取り組むべき優先戦術を整理する。
| 立場 | 最優先で取り組むべき戦術 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 新人営業・〜3年目 | 戦術1(店舗マップ)+戦術4(訪問記録自動化) | ベテランに追いつくスピードを劇的に上げる |
| 中堅営業・4〜10年目 | 戦術2(油外収益化提案)+戦術3(業界レター) | 御用聞きから経営伴走者への転換 |
| ベテラン営業・11年〜 | 戦術4の組織知化+戦術5(キャリア戦略) | 暗黙知を組織資産に転換、後継者育成 |
| 営業所長・支店長 | 全戦術のフレームワーク化 | エネルギー転換期への組織転換 |
| メーカー本部スタッフ | 戦術4のフィードバック活用+戦術3の組織展開 | 現場の声を商品企画に直結 |
SS・整備工場向け営業に必要な、これからの思考
最後に、SS・整備工場向け営業が持つべき視点を整理する。
御用聞きを否定しない。だが御用聞きだけを続ける営業は、5年以内に淘汰される。ガソリンスタンドは30年で半減、2040年には13,000カ所を下回る予測。整備工場はEV/HVの高電圧専門化を迫られる。SS店主・整備工場経営者が本当に求めているのは、もう1つの油外商材メーカーではない。エネルギー転換期を一緒に乗り切るパートナーだ。AIを使える営業は、同じ訪問数でも、店長の中に残る印象が圧倒的に違う。1年後、その差は売上と紹介経由案件数となって明確に表れる。3年後、その差はキャリアそのものを変える。
SS・整備工場向け営業は、外から見れば縮小する業界に見える。だが業界の中で起きているのは縮小ではなく、再編とエネルギー転換だ。廃業するSSもあれば、油外で生き残るSSもある。EV対応で生き残る整備工場もあれば、廃業する工場もある。生き残る側のパートナーになれるかどうかは、構造変化の理解と経営伴走力で決まる。
最初にモビリティ業界の経営パートナーのポジションを取った営業が、エリア内の主要SS・整備工場との長期取引を独占するポテンシャルがある。
まとめ:Next Action
明日から取り組むべきステップを、優先度順に3つ提示する。
- 今日中の行動:ChatGPTの無料アカウントを作る
- 有料版に進む前に、まず触ってみる。30分でいい。
- 今週中の行動:訪問予定のSS1店舗について、戦術2の油外収益化提案書をAIで作成して持参する
- 1店舗での手応えが、すべての訪問を変える起点になる。
- 今月中の行動:戦術3の業界月次レターを作成し、担当エリアのSS店主・整備工場経営者30名に郵送する
- 半年後、経営伴走パートナーとしてのポジションを仕込む。
ガソリン1リットル・洗剤1本に込められた、人と車を支える仕事の価値を、AIで再定義する。それが、これからのSS・整備工場向け営業の姿である。


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