電話が繋がらない。繋がっても、最初のひと言で切られる。テレアポがうまくいかない原因の多くは、気合いや度胸ではなく「台本」にある。裏を返せば、自社の商材とターゲットに最適化されたトークスクリプトさえ手元にあれば、勝率は確実に上がる。
そして今、そのスクリプトは生成AIに作らせることができる。営業経験の浅いメンバーでも、ベテランが頭の中で組み立てているトーク設計を、数分でテンプレート化できる時代になった。
本記事は「AIでテレアポのトークスクリプトを作る手順」と「そのまま使えるシーン別トーク例+コピペプロンプト」をまとめた実践ガイドである。受付突破から課題ヒアリング、断りの切り返し、アポ打診のクロージングまで、商談プロセスごとに台本と作成プロンプトをセットで提示する。読み終えた直後から、自社専用のスクリプト作りに着手できる構成にした。
なお、実際にAIにテレアポ台本を作らせてアポ率がどう変わったかを検証した記事は別にある。本記事は「作り方とテンプレート」に振り切るので、検証結果が気になる読者は記事末のリンクから後で読んでほしい。
AIでテレアポスクリプトを作る基本の手順
最初に結論を述べる。AIに「テレアポのトークスクリプトを作って」とだけ頼んでも、当たり障りのない一般論しか返ってこない。使えるスクリプトを引き出す鍵は、AIに渡す情報の質と量にある。
具体的には、次の3つの情報をセットで渡すことで、出力の精度が一気に上がる。
渡すべき3つの情報
| 情報 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 自社情報 | 商材・提供価値・他社との違い | SFAツール。導入後の定着率の高さが強み |
| ターゲット | 誰にかけるか・役職・業種・規模 | 従業員50〜300名の製造業の営業部長 |
| 目的 | この電話のゴール | 30分のオンライン商談アポを取る |
この3点を言語化できていないなら、まずそこから整理する。逆に言えば、ここさえAIに渡せば、あとはシーンごとに具体的な台本を量産できる。
ターゲットを絞ることは特に重要だ。「全業種の経営者向け」のような広いターゲットでは、刺さらない無難なトークしか生成されない。業種・規模・役職を1つに絞り込むほど、相手の心に刺さる言葉が出てくる。
まずは土台となるプロンプトを用意する
以下が、スクリプト作成の出発点となる基本プロンプトである。自社の情報に置き換えて使ってほしい。
あなたはB2B営業のテレアポ専門のコンサルタントです。
以下の条件で、新規開拓のテレアポ用トークスクリプトを作成してください。
# 自社情報
- 商材:(例:営業支援SFAツール)
- 提供価値:(例:入力負荷を減らし、現場に定着するSFA)
- 競合との違い:(例:定着率が高く、3か月で全社利用に到達した実績)
# ターゲット
- 業種・規模:(例:従業員50〜300名の製造業)
- 相手の役職:(例:営業部長)
- 想定される悩み:(例:SFAを入れたが入力されず形骸化している)
# この電話の目的
- (例:30分のオンライン商談のアポイントを取る)
# 出力の条件
- 話し言葉で、実際に読み上げられる自然な日本語にする
- 1文を短くし、相手が口を挟める「間」を意識する
- 専門用語や横文字は避け、相手がすぐ理解できる言葉にする
このプロンプトを土台に、次章からはシーンごとにトーク例と専用プロンプトを掘り下げていく。
シーン別・テレアポのトークスクリプト例とコピペプロンプト
ここからが本題だ。テレアポは1本の電話の中で、局面が次々と切り替わる。受付の応対、担当者が出た瞬間、ヒアリング、断りへの対応、そしてアポ打診。それぞれで求められるトークは全く異なる。
局面ごとに「すぐ使えるトーク例」と「それを自社向けに作り変える/磨くためのプロンプト」をセットで用意した。トーク例はそのまま読み上げるのではなく、自社の言葉に翻訳する叩き台として使ってほしい。
シーン1:受付突破のトーク
最初の関門は受付だ。ここで売り込みと判断されれば、担当者につながる前に終わる。ポイントは、用件を簡潔に伝え、過剰にへりくだらず、淡々と取り次ぎを依頼することにある。
トーク例は次のとおりだ。
お世話になっております。
株式会社○○の△△と申します。
営業部のご責任者様に、SFAの定着率に関する件で
お電話いたしました。ご担当者様はいらっしゃいますでしょうか。
「営業のDXについてご案内が」のような曖昧で売り込み臭い表現は避ける。誰宛てに、何の件で、という2点を端的に伝えるのがコツである。
受付突破のトークをAIに作らせる、あるいは手元の台本を磨くなら、次のプロンプトを使う。
B2B新規開拓テレアポの「受付突破」のトークスクリプトを3パターン作成してください。
# 前提
- 商材:(自社の商材)
- 取り次いでほしい相手:(例:営業部長)
- 用件:(例:SFAの定着率に関する情報提供)
# 条件
- 売り込み感を出さず、用件を簡潔に伝える
- 受付の方が取り次ぎやすいよう、誰宛て・何の件かを明確にする
- それぞれ言い回しのトーンを変えて3パターン出す
シーン2:担当者へのつかみ(最初の15秒)
担当者が電話口に出てから、相手が話を聞くか切るかを決めるまでは、わずか十数秒だ。この最初の15秒で「自分に関係がありそうだ」と思わせられるかが勝負を分ける。
やってはいけないのは、いきなり商品説明を始めることだ。まず相手の課題を言い当て、興味のフックを作る。
トーク例を示す。
お忙しいところ恐れ入ります。○○の△△と申します。
1分だけお時間をいただけますでしょうか。
製造業の営業部長の方から
「SFAを導入したのに、現場が入力してくれず形骸化している」
というお悩みをよく伺います。
御社で同じような課題はございませんか。
ここで相手が「ああ、それはある」と反応すれば、会話の主導権が握れる。逆に一方的に商品名を連呼すると、その瞬間に切られる。
このつかみ部分をAIに作らせるプロンプトは以下だ。
B2Bテレアポの「最初の15秒のつかみトーク」を作成してください。
# 前提
- ターゲット:(例:製造業の営業部長)
- 想定される悩み:(例:SFAが形骸化している)
- 自社の提供価値:(自社の強み)
# 条件
- 商品説明から入らず、相手の課題への共感から始める
- 「自分に関係がある」と思わせるフックを冒頭に置く
- 15秒(およそ150文字)で読み切れる長さにする
- 最後は相手が答えやすい問いかけで終える
つかみのトークは、相手の反応によって複数パターンを用意しておくと強い。AIに「悩みの切り口を変えて3パターン」と追加で頼めば、トークの引き出しが一気に増える。
シーン3:課題ヒアリングのトーク
つかみで興味を引けたら、すぐにアポを取りにいきたくなる。だが、ここで焦ってはいけない。相手の課題を深掘りするヒアリングをはさむことで、アポの質も承諾率も上がる。
ヒアリングの目的は、相手自身に「これは解決すべき課題だ」と自覚してもらうことにある。一方的に質問を浴びせるのではなく、相手が話したくなる順序で問いを重ねる。
ありがとうございます。差し支えなければ、
今のSFAの運用状況を少しだけ伺ってもよろしいでしょうか。
導入されたのは、どのくらい前になりますか。
なるほど。入力が定着しないというのは、
現場の方の負担が大きいことが原因でしょうか。
それとも、入力する意味が共有されていない感じでしょうか。
二択で問いかけると、相手は答えやすい。漠然と「課題は何ですか」と聞くより、具体的な選択肢を示すほうが本音を引き出せる。
ヒアリングの質問設計をAIに任せるなら、次のプロンプトが有効だ。
B2Bテレアポの「課題ヒアリング」の質問リストを作成してください。
# 前提
- 商材:(自社の商材)
- ターゲット:(例:製造業の営業部長)
- 仮説となる課題:(例:SFAが形骸化している)
# 条件
- 相手が「解決すべき課題だ」と自覚するような質問の流れにする
- 答えやすいよう、二択や具体的な選択肢を含む問いを混ぜる
- 浅い質問から徐々に核心に迫る順番で5問ほど並べる
- 尋問にならない、柔らかい話し言葉にする
シーン4:よくある断りへの切り返し
テレアポで最も差がつくのが、断られた後の一言だ。多くの人はここで引き下がるが、断り文句の大半は反射的なもので、本気の拒絶ではない。代表的な3つの断りへの切り返しを用意しておこう。
| 断り文句 | 切り返しの方針 | トーク例 |
|---|---|---|
| 今は不要 | 今すぐの導入ではなく情報提供だと伝える | 今すぐの導入をお願いするものではございません。今後の比較検討の材料として、5分だけ情報をお渡しできればと思っております |
| 予算がない | コストではなく投資対効果の話に転換する | 承知しました。実はこのお話は、コスト削減で投資分を回収いただいた事例が多く、その観点だけでも一度ご覧いただければと思います |
| 資料だけ送って | 資料の精度を上げるための短時間ヒアリングを提案する | もちろんお送りします。ただ、御社に合わない資料をお送りしても手間になりますので、的を絞るために2、3点だけ伺ってもよろしいですか |
重要なのは、断りを真っ向から否定しないことだ。一度受け止めてから、相手にとっての次の小さなメリットを提示する。この「受け止めて、ずらす」型を覚えておくと応用が効く。
断りの切り返しは、事前にAIで大量に用意しておくのが効率的だ。次のプロンプトで自社向けの切り返し集を作れる。
B2Bテレアポでよくある断り文句への「切り返しトーク」を作成してください。
# 前提
- 商材:(自社の商材)
- 強み:(自社の強み・実績)
# 対応してほしい断り文句
1. 今は必要ない
2. 予算がない
3. まず資料だけ送ってほしい
# 条件
- 相手の断りを一度受け止めてから切り返す
- 押し売り感を出さず、相手にとっての次の小さなメリットを提示する
- それぞれ2〜3文の短いトークにする
- 食い下がりすぎず、引き際も意識した自然な会話にする
切り返しのトークは、自分一人で考えると発想が偏る。AIに加えて、AIを断る側の顧客役に設定し、模擬的に練習しておくとさらに磨かれる。意地悪な顧客を相手に切り返しを鍛える方法は反論処理が苦手な営業へ|AIを意地悪な顧客役にする最強プロンプトで詳しく解説している。
シーン5:アポ打診のクロージング
会話が温まっても、クロージングが弱ければアポにはつながらない。やりがちな失敗は「一度お時間いただけませんか」と漠然と聞いてしまうことだ。これでは相手に「断る」「考える」という選択肢を与えてしまう。
クロージングのコツは、日程を二択で提示することにある。会うかどうかではなく、いつ会うかに論点をずらす。
ありがとうございます。それでしたら、
詳しい事例を30分ほどでご説明させてください。
来週ですと、火曜の午後か、木曜の午前ですと
どちらがご都合よろしいでしょうか。
「ご都合のよいとき」ではなく、具体的な候補日を2つ出す。相手は2択から選ぶだけでよくなり、心理的なハードルが下がる。
アポ打診のクロージングトークをAIに作らせるなら、以下を使う。
B2Bテレアポの「アポ打診のクロージング」トークを作成してください。
# 前提
- 提案したいこと:(例:30分のオンライン商談)
- 相手に提示する価値:(例:同業他社の成功事例の共有)
# 条件
- 「会うかどうか」ではなく「いつ会うか」に論点を絞る
- 日程を二択で提示し、相手が選ぶだけの状態にする
- 押しつけがましくない、丁寧で自然な言い回しにする
- アポ確定後の流れ(当日の連絡方法など)も一言添える
作ったスクリプトを使うときの注意点
AIで作ったスクリプトは強力な武器だが、使い方を誤れば逆効果になる。最後に2つだけ、現場で必ず意識してほしい点を挙げる。
第一に、棒読みしないこと。スクリプトはあくまで設計図であり、読み上げ原稿ではない。文字を追うことに意識が向くと、声に体温がなくなり、相手はすぐに営業電話だと察知する。トークの流れと要点を頭に入れ、自分の言葉として話す。
第二に、相手の反応で台本を外す勇気を持つこと。相手が前のめりなら説明を飛ばしてクロージングへ進み、戸惑っていれば一歩戻る。スクリプトに会話を合わせるのではなく、会話にスクリプトを合わせる。AIが作るのは「型」であり、それを生かすも殺すも、当日の対話力次第である。
スクリプトは一度作って終わりではない。実際にかけてみて、つながった割合や切られたタイミングを記録し、その結果をAIにフィードバックして改善させる。この回し方を続ければ、台本は自社の現場に合わせてどんどん精度を増していく。
Next Action
最後に、この記事を読んだ今日から着手すべきことを整理する。
- 自社の「商材・提供価値・競合との違い」を3行で書き出す
- 最もアポを取りたいターゲットを、業種・規模・役職で1つに絞り込む
- 本記事の基本プロンプトに1と2を当てはめ、AIにスクリプトの土台を作らせる
- シーン別プロンプトで、受付突破からクロージングまでの台本を一通り揃える
- 1日かけてみて、結果をAIに共有し、トークを1回改善する
まずはターゲットを1つ決め、基本プロンプトを動かすところから始めてほしい。完璧な台本を待つ必要はない。叩き台をAIに作らせ、現場で回しながら磨いていくほうが、結果ははるかに早く出る。


コメント