下期の営業計画の立て方|AIで作る現実的な半期プラン

下期の営業計画の立て方を解説する記事のサムネイル

上期の着地が見えてきた。数字は目標に届かない。そんな状況で、経営から下期計画の提出を求められている。3月決算なら上期は9月で締まり、10月から下期が始まる。下期入りまでに残された時間は長くない。手元にあるのは重い未達の数字と、それを取り返せという無言の圧力だ。役員会の日程だけが着々と近づいてくる。

この場面で多くの営業部長が書いてしまうのが、上期の反省文に気合いを上乗せした「下期計画」である。未達分を各メンバーの目標に按分し、「活動量を増やし、必ず挽回する」と結ぶ。だが、上期にできなかったことが同じやり方で下期にできる根拠は、どこにもない。それは計画ではなく決意表明だ。そして経営は、決意表明を何度も見てきている。

結論から言う。下期計画の質は、未来予測のうまさではなく上期の振り返りの精度で決まる。未達の要因を数字で分解し、パイプラインの現実を直視し、やらないことを決める。この泥臭い作業をAIに手伝わせれば、合計150分で「実行できる計画」に組み直せる。本記事では3月決算(4月始まり・下期は10月開始)を例に、4ステップの手順と、コピペで使えるプロンプト2本、経営への説明の組み立てまでを示す。12月決算の会社なら下期は7月に始まる。時期を読み替えれば、手順はそのまま使える。

目次

なぜ下期計画は絵に描いた餅になるのか?

機能しない下期計画には共通の型がある。未達の期の翌計画が絵に描いた餅で終わる原因は、次の3パターンにほぼ集約される。

パターン典型的な症状破綻する理由
未達分の単純上乗せ上期の不足分をそのまま下期目標に加算する上期に届かなかった数字を、同じ体制・同じやり方でさらに積み増せる根拠がない
原因分析が感覚的「訪問が足りない」「引き合いが弱い」で総括する要因が数字で特定されず、打ち手が精神論になり行動が変わらない
行動計画に落ちていない目標と重点方針はあるが、月ごとの行動数がない進捗を測る物差しがなく、ズレに気づくのが期末になる

3つに共通するのは、振り返りが浅いまま未来だけを描いていることだ。過去の分解が粗ければ、そこから引いた未来の線も粗くなる。逆に言えば、上期のデータを正しく分解できれば下期計画は自動的に具体性を帯びる。以降の4ステップは、その分解作業をAIに任せて合計150分で終わらせる手順である。

Step 1: 上期の振り返りをAIでやる【所要60分】

最初にやるのはデータの棚卸しだ。①月別・担当別の実績(目標比)、②失注案件の一覧と失注理由、③活動量(新規商談数・提案数・受注率)の3点をSFAや管理表からエクスポートし、1つのテキストにまとめる。きれいに整形する必要はない。AIに貼れる形になっていれば十分だ。

これをAIに渡し、未達要因を市場・戦略・実行の3層に分類させる。市場要因は外部環境の変化、戦略要因は狙いの誤り、実行要因は現場の量と質の問題である。

分類中身打ち手の方向
市場要因需要の後退、顧客側の予算凍結、競合の参入前提の見直し。経営と共有し、目標や資源配分を再交渉する
戦略要因ターゲット選定、商材構成、価格設定のズレ狙いの変更。下期の重点セグメントを引き直す
実行要因活動量の不足、提案の質、案件管理の甘さマネジメントの改善。行動指標と週次の点検で潰す

なぜ3層に分けるのか。層によって打ち手の主語が変わるからだ。実行要因は営業部内で解決できるが、戦略要因の修正には方針転換が、市場要因への対応には経営判断が要る。すべてを「頑張りが足りなかった」で括った瞬間、打ち手は精神論に退化する。3層に割った瞬間、打ち手は担当者と期限を持てるようになる。

60分の内訳は、データの用意に30分、AIとの分析に20分、結果の検証に10分が目安だ。分析結果を眺めて「そんなはずはない」と感じる箇所こそ丁寧に見る。違和感の正体は、データの欠けか、自分の思い込みか、どちらかである。どちらであっても、経営会議の前に気づけたことに価値がある。

なお、この分析の精度は失注理由データの質に依存する。理由欄が「価格」「タイミング」ばかりで実態を映していないなら、先に失注理由をAIで分析し直す手順で理由の再分類から始めるべきだ。ゴミを入れればゴミが出る。ここだけは手を抜けない。

Step 2: パイプラインの現実を直視する【30分】

次に、下期の数字が今どれだけ見えているかを測る。現在のパイプライン一覧(案件名・金額・確度・想定受注時期)をAIに貼り、確度別の期待値を計算させ、下期目標に対する充足率を出す。仮に下期目標が4億円で期待値が2.4億円なら、残る1.6億円はこれから作る数字である。この区別が計画の土台になる。見えている数字の刈り取りと、見えていない数字の創出とでは、必要な行動がまったく違うからだ。

同時にやるべきが楽観の割引きである。自己申告の確度は必ず楽観に寄る。未達の期はなおさらだ。担当者は詰められたくないから確度を高めに申告し、マネージャーは信じたいから深掘りしない。こうして決裁者に会えていない、予算枠を確認していない、導入時期の合意がない案件が、確度Aに平然と紛れ込む。ここで有効なのが、案件ごとに失注したと仮定して死因を先に挙げさせる問いだ。具体的な手順とプロンプトはプリモータム(死亡前死因分析)の記事にまとめてある。下期計画の前提となるパイプラインから水膨れを抜く作業として、このタイミングで回してほしい。

30分後、手元には見えている数字と作るべき数字の2つが残る。楽観を除いた充足率が半分を切っていても、落胆する必要はない。それが現実であり、現実から引いた線だけが実行に耐える。むしろ危険なのは、水膨れしたパイプラインを根拠に「下期はいける」と報告し、12月にギャップが露呈することだ。痛みは早く受け取るほど安く済む。

Step 3: 重点顧客と捨てる領域を決める【30分】

作るべき数字が明らかになると、焦りから全方位に動きたくなる。これが未達の翌期にもっとも起きやすい失敗だ。使える時間は上期と同じで、追う数字は重い。ならば取るべき道は拡散ではなく集中である。

判断材料は上期のデータにある。受注案件と失注案件をAIに対比させ、受注側に共通し失注側に少ない特徴を抽出させる。業種、企業規模、導入のきっかけ、決裁ルート、リードタイム。この5つの軸で見れば、自社の勝ちパターンに合う顧客像は輪郭を持つ。感覚では「どこでも戦える」と思っていても、データはたいてい「勝てる場所は偏っている」と告げる。下期はその像に合致する顧客へ弾を集め、社名レベルの重点顧客リストに落とし込む。リストは部長の頭の中ではなく、メンバー全員が見える場所に置く。

同じ重さで、捨てる領域も明文化する。平均リードタイムが下期内に収まらない新規案件、構造的に勝率の低いセグメント、単価が小さく工数だけを食う商談。これらは下期の数字としては追わない(将来への種まきは別枠で管理する)。捨てる領域を文書にしない計画は、現場の緊急対応に必ず侵食される。

もう一つ、顧客の多くが3月決算なら、下期後半の1〜3月は相手の期末予算と重なる。使い切りたい予算が動くこの時期の需要は、狙って取りに行く価値がある。具体的な仕掛け方は顧客の期末予算を狙う営業の記事で詳述した。重点顧客の選定にこの視点を加えると、下期後半に受注の山を作りやすくなる。

Step 4: 月次の行動計画に分解する【30分】

最後に、数字を行動へ変換する。作るべき数字を平均単価で割れば必要受注件数が出る。受注率で割り戻せば必要商談数、商談化率で割り戻せば必要リード数が出る。この逆算の計算手順と専用プロンプトは売上目標の逆算の記事で詳述しているので、そちらに譲る。ここで押さえるべきは、逆算した行動数を月次に配分するときの2つの原則だ。

第一に、均等割りにしないこと。10月は仕込みに使い、12月は年末で稼働日が減り、1〜3月は顧客の期末需要で商談が動く。月ごとの地形に合わせて山谷をつける。第二に、リードタイムから逆算すること。平均リードタイムが3ヶ月なら、3月の受注を作れるのは12月までに立ち上げた商談だけだ。つまり下期の勝敗を分けるのは10〜12月の商談創出量である。1月に慌てて動いても、その受注は来期に落ちる。

月次で追う指標は、新規商談数・提案数・受注額の3つで十分だ。指標を増やすほど点検は形骸化する。そして週次で新規商談数だけは必ず見る。受注額は結果指標であり、ズレが見えたときにはもう打つ手が限られる。行動量の遅れは、受注の遅れより3ヶ月早く警告を出してくれる。ここまで落とし込めば、下期計画は「見て終わる資料」から「毎週使う道具」に変わる。

コピペで使えるプロンプト2本

ここまでの作業を支える2本を置く。1本目はStep 1の中核、上期実績の分析だ。データを差し込んで貼るだけで、未達要因の分類と下期の重点仮説まで出力させる。

あなたはB2B営業の戦略コンサルタントだ。以下の上期実績をもとに、未達要因の分析と下期の重点仮説を作ってほしい。

# 前提
- 会社・商材: 〔例: 製造業向け生産管理SaaS。平均単価は年120万円〕
- 上期の目標と実績: 〔例: 目標4.0億円に対し実績3.2億円(達成率80%)〕
- 月別・担当別の実績: 〔ここに目標比の一覧を貼る〕
- 失注案件と理由: 〔ここに失注一覧を貼る〕
- 活動量データ: 〔例: 新規商談数は計画比75%、提案数は計画比90%〕

# 出力してほしいもの
1. 未達要因を「市場要因・戦略要因・実行要因」の3つに分類し、それぞれ根拠となる数字を添える
2. 影響額の大きい順に要因を並べ、未達額への寄与を概算する
3. データ不足で分類に迷う点は「追加で確認すべきこと」として質問リストにする
4. 下期の重点仮説を3つ、「やめること」1つとセットで提案する

数字の裏づけがない推測には「仮説」と明記すること。

2本目は、Step 1〜4で組んだ計画のドラフトを、経営会議向けの1枚サマリに変換するものだ。現場向けの計画書と経営向けの説明は、同じ中身でも編集がまるで違う。

以下の下期計画ドラフトを、経営会議向けの1枚サマリに変換してほしい。

# 入力
- 下期計画ドラフト: 〔ここにStep 1〜4で作った計画を貼る〕
- 報告する相手: 〔例: 社長と管理担当役員。営業出身ではなく、数字の根拠を重視する〕
- 上期の着地見込み: 〔例: 達成率80%で着地の見込み〕

# 出力条件
1. 構成は「上期総括(要因3つ)→ 下期方針 → 月次の数字計画 → 必要な支援・投資」の順にする
2. 各要因は「事実(数字)→ 解釈 → 下期の打ち手」を1行ずつで書く
3. 精神論の表現(「徹底する」「全力で」など)を使わない
4. 経営から出そうな質問を3つ想定し、回答の要点を末尾に添える
5. 全体をA4用紙1枚相当、800字以内に収める

どちらも出力はたたき台だ。数字の解釈が実態とずれる箇所を、自分の言葉で直す。その編集の過程こそが、経営会議で質問に即答するための準備になる。

経営にどう説明するか?

未達の期の計画報告は、放っておくと謝罪大会になる。頭を下げる時間が長いほど誠実に見える気がして、肝心の計画の説明が薄くなる。だが経営が聞きたいのは反省の深さではなく、下期の数字の確からしさだ。謝罪は冒頭の一言で足りる。説明は要因、打ち手、支援の順で組む。

順番話す内容外してはいけない点
1. 要因未達の要因を、数字つきで3つに絞って示す言い訳と区別する。市場・戦略・実行の分類で客観的に語る
2. 打ち手要因と1対1で対応する下期の施策を示す要因に対応しない施策の羅列は思いつきと見なされる
3. 支援打ち手の実行に必要な投資・判断を具体的に依頼する価格改定や人員配置など、経営にしか動かせない領域を明示する

とくに3点目を省く営業部長が多い。だがStep 1で見たとおり、戦略要因と市場要因への打ち手は営業部単独では完結しない。価格の見直し、ターゲットの変更、人員の再配置。これらは経営判断であり、求めなければ未達の責任だけを一人で背負うことになる。支援の要求は弱さの表明ではなく、計画の実行条件の提示である。ここまで含めて初めて、下期計画は営業部の作文から組織の計画になる。

Next Action:今日やる3つ

分析も計画も、データを揃えた者から前に進む。今日やるべきことは次の3つだ。

  1. SFAや管理表から、上期の実績・失注一覧・活動量データをエクスポートし、1つのテキストにまとめる。
  2. 1本目のプロンプトに貼り、未達要因の3層分類をまず1回出してみる。違和感のある解釈には赤を入れる。
  3. パイプライン一覧を開き、決裁者に会えていない確度A案件に印をつける。

下期の勝敗は、10月の初日ではなく、計画を書き上げるこの数日で半分決まっている。反省文ではなく、実行できる計画を持って下期に入ってほしい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次